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副業でデザインや記事の仕事を受けていたら、取引先からメールが来た。「インボイスの登録番号を教えてください」。登録なんてしていないし、そもそもインボイスって何だっけ。そんな人に向けて書きました。あわてて登録しなくて大丈夫です。読み終わるころには、自分は登録したほうがいいのか、どちらを選ぶと何が起きるのかがわかります。
この記事でわかること
- インボイスとは何か。なぜ取引先が番号を聞いてくるのか
- 副業の自分は、登録したほうがいいのか
- 登録しないまま続けると、どうなるか
- 登録したら、消費税をいくら納めるのか(2割特例・3割特例)
先に結論
- 登録するかどうかは自分で選べる。決め手は「だれに売っているか」
- 登録すると消費税を納める側になる。でも2026年分は、もらった消費税の2割だけでOK
- 登録しなくても仕事は続けられる。ただ、相手の負担は少しずつ増えていく
01インボイスって、そもそも何?
ひとことで消費税の額と番号が書いてある請求書。出せるのは、登録した人だけ。
インボイス制度は、2023年10月に始まりました。インボイスは「消費税がいくらか」をきちんと書いた請求書や領収書のこと。正式には「適格請求書」といいます。
ふつうの請求書とのちがいは、登録番号が書いてあること。この番号は、税務署に登録した人だけがもらえます。つまり、登録しないとインボイスは出せません。
ことば免税事業者
消費税を納めなくていい人のこと。個人なら、2年前の1年の売上が1,000万円以下だと、ふつうはこれに当たります。前の年の1〜6月の売上が多いと、外れることもあります。副業の売上が1,000万円をこえていなければ、ここに入りますよね。
会社からもらう給料は、消費税の対象ではありません。なので1,000万円の判定に、給料は入りません。見るのは副業の売上だけです。
02なぜ取引先は「登録番号」を聞いてくるの?
ひとことで取引先が納める消費税を減らすのに、あなたのインボイスが要るから。
会社が納める消費税は、引き算で決まります。お客さんから「もらった消費税」から、ほかの人に「払った消費税」を引いた残りです。この引き算を「仕入税額控除」と呼びます。
今は、この引き算をするには、原則として相手からもらったインボイスがいります。
たとえば、あなたが10万円の仕事をして、消費税1万円と合わせて11万円をもらったとします。あなたが登録していれば、会社はこの1万円を引き算に使えます。登録していないと、そのままでは使えません。だから、番号を聞いてくるんですね。
ポイント
「聞かれた」=「登録しないとダメ」ではない
番号を聞くのは、ただの確かめのこともよくあります。登録していないなら「登録していません」と答えてOK。そのうえで、今後どうするかを相談すれば大丈夫です。
03自分は登録したほうがいい?
ひとことで売る相手が「会社」なら考えてみる。「個人のお客さん」なら、いらないことが多い。
国税庁の資料によると、次の相手はインボイスがいりません。
- ふつうのお客さん(個人)
- 消費税を納めていない人やお店(免税事業者)
- かんたんな計算で消費税を納めている会社やお店(簡易課税・2割特例・3割特例。このあと書きます)
- 1回1万円未満の取引で、少額特例を使える相手(売上が一定以下の会社やお店。期間限定)
反対に、相手のほとんどが会社なら、インボイスを求められやすくなります。会社からデザインや記事、動画の編集などを受けている人は、こちらに当たりがちです。
登録する
いいところ
- インボイスを出せるので、相手が困らない
- これまでどおり、消費税の分ものせて請求しやすい
- 会社からの仕事を受けやすくなる
気をつけること
- 毎年、消費税を計算して納めることになる
- 登録すると、2年くらいはやめられない
- 本名と番号がネットに載る
登録しない
いいところ
- 消費税を納めなくていい
- もらった消費税の分は、そのまま手もとに残る
気をつけること
- 相手が引き算に使える分が、少しずつ減っていく
- 「少し安くして」と相談されることがある
どちらが正解、ということはありません。だれに売っているか、どれくらい売れているかで決めます。
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04登録しないまま続けると、どうなる?
ひとことで仕事は続けられる。でも相手の負担が、段階的に増えていく。
登録しなくても、今までどおり仕事はできます。ただ、相手がふつうの計算(本則課税)で消費税を納める会社なら、あなたに払った消費税を引き算に使いにくくなります。
いきなりゼロにはなりません。今は「経過措置」というつなぎの期間で、一部なら引き算に使えます。この割合は、2026年の税のルールの見直しで変わりました。
出典:国税庁「令和8年度税制改正特集」「インボイス制度 導入編(令和8年5月)」
この記事を書いている2026年10月から、80%が70%に下がりました。2031年10月からは、まったく使えなくなります。時間がたつほど、相手の負担は増えていくわけです。
なので、相手から「少し安くしてほしい」「登録してほしい」と相談されることがあります。相談されるのは、おかしなことではありません。
気をつけて
一方的な値下げは、法律で問題になることがある
国(財務省や公正取引委員会など)がQ&Aを出しています。値段の見直しを話し合うこと自体は、すぐには問題になりません。でも、立場の強い相手が話し合いなしに値段を下げると、法律で問題になるおそれがある、と書かれています。「登録しないなら安くする。いやなら仕事はもう頼まない」と一方的に言うのも、同じおそれがあります。登録した人の値段を、話し合いなしにそのままにしておくのも同じ。困ったときは、公正取引委員会の相談窓口に話せます。
05登録したら、消費税はいくら納めるの?
ひとことで2026年分は、もらった消費税の2割だけ。2027・2028年分は3割。
もともと納める額は「もらった消費税 − 払った消費税」です。でも、払った分を1つずつ集めて足すのは大変ですよね。
そこで、インボイスのために登録した人には、かんたんな計算のしかたが用意されています。もらった消費税の2割を納めればいい「2割特例」です。経費の領収書を集めて計算しなくてOK。免税事業者から登録した人などが対象で、使えない場合もあります。
2割特例は、2026年9月30日を含む年の分まで。個人なら2026年分が最後です。今から登録すると、2026年分は登録した日より後の売上の分だけを納めます。そのあとの2027年分と2028年分には、「3割特例」ができました。免税事業者から登録した個人だけが使えます。
2万円
2割特例のとき(2026年分まで)
3万円
3割特例のとき(2027・2028年分)
5万円
簡易課税で、サービス業のとき
1年の売上が100万円で、消費税を10万円もらったときの例です。2割特例なら2万円、3割特例なら3万円を納めます。もらった10万円より、だいぶ少なくなります。
ことば簡易課税
払った消費税を、仕事の種類ごとに決まった割合で見積もるやり方。サービス業なら、もらった消費税の50%を「払った分」とみなします。自分の仕事がどの種類かは、税務署で確かめられます。使うには、税務署に届け出がいります。期限は、原則として使いたい年の前の年の12月31日まで。一度選んだら、2年は続けます。
- 2023年10月〜
インボイス制度が始まる
このときから、登録した免税事業者は2割特例を使えるようになりました。
- 2026年分
2割特例の最後の年
2027年3月までに、もらった消費税の2割を納めます。
- 2027・2028年分
3割特例(個人だけ)
もらった消費税の3割を納めます。登録していること、2年前の売上が1,000万円以下であること、前の年の1〜6月の売上も多すぎないことなどが条件です。
- 2029年分〜
ふつうの計算か、簡易課税
特例は終わります。3割特例を使った次の年なら、その年の分の締め切りまでに届け出れば、その年から簡易課税に移れます。
気をつけて
登録したら、2年はやめられない
免税事業者が登録すると、登録した日から2年がたつ日を含む年までは、消費税を納める側のままです。とちゅうで登録をやめても、この間は消費税を計算して納めます。やめると、3割特例も使えません。やめるときは、やめたい年が始まる15日前までに届け出ます。お試しのつもりで登録するのは、やめておきましょう。
06登録すると、名前が公表されるって本当?
ひとことで本当。本名と番号がネットで見られる。屋号や住所は、自分で頼まなければ出ない。
登録した人のことは、国税庁の「公表サイト」に載ります。個人なら、出るのは名前・番号・登録した日など。番号を入れて調べれば、だれでも見られます。
屋号(お店や活動の名前)と仕事場の場所は、自分で頼んだときだけ載ります。住所は載りません。なので、このサイトの上で、ペンネームと本名がそのままつながることはありません。
メモ
ペンネームで活動している人へ
インボイスには番号を書きます。もらった相手は、その番号で本名を調べられます。本名を知られたくない相手と仕事をしているなら、登録の前に考えておいてください。勤め先に副業が知られるきっかけは、別の記事にまとめています。
07登録すると決めたら、何からやる?
ひとことで相手に聞く → e-Taxで出す → 請求書に番号を書く → 次の年の3月に納める。
相手に「インボイスはいりますか」と聞く
相手が簡易課税や2割特例を使っているなら、インボイスはいりません。聞いてから決めても、おそくありません。
e-Taxで申請書を出す
出すのは「適格請求書発行事業者の登録申請書」。国税庁は、e-Tax(ネットで税の手続きができるしくみ)で出すよう案内しています。郵送でも出せます。
登録したい日の15日前までに出す
免税事業者は、申請書に「登録希望日」を書けます。出した日から15日あと以降の日を選びます。たとえば2027年1月1日から登録したいなら、2026年12月17日までに出します。
届いた番号を、請求書に書き足す
番号は、税務署から知らされます。今の請求書に、番号や、税率ごとの金額と消費税の額などを足せば、インボイスになります。決まった形はありません。
次の年の3月31日までに、消費税を申告して納める
所得税の確定申告(3月15日まで)とは別に、消費税の申告もします。2割特例や3割特例は、申告書に「使う」と書くだけ。前もって届け出なくてかまいません。
所得税の確定申告をまだしたことがない人は、副業の確定申告の記事から読むとスムーズです。
08よくある質問
Q副業の売上が少なくても、登録できる?
Aできます。売上がいくらでも登録できます。ただ、登録すると、売上が少なくても毎年、消費税を計算して納めることになります。手間と比べて決めてください。
Q2割特例を使うのに、届け出はいる?
Aいりません。消費税の申告書に「2割特例を使う」と書くだけです。3割特例も同じです。
Q登録したら、値上げをお願いしてもいい?
A相談していいと考えています。登録すると消費税を納める側になります。その分を値段にどうのせるか、話し合うのはふつうのことです。国のQ&Aでも、話し合いなしに値段をそのままにするのは、問題になるおそれがあるとしています。
Qわからないことは、どこで聞ける?
A国税庁の「インボイスコールセンター」で、制度についての質問を電話で受けています。自分の申告の中身を相談したいときは、税務署に聞いてみてください。
今日の最初の一歩
仕事の相手を書き出して、「会社」か「個人」かに分けてみる
スマホのメモに、去年から今年の相手を並べるだけです。会社からのお金がほとんどなら、いちばん大きな相手に「インボイスはいりますか」と1通送ってみましょう。答えを聞いてから、登録するかを決めれば大丈夫です。
2026.10.06 公開 文・WE POP編集部
参考にした情報
- 国税庁「インボイス制度特設サイト」
- 国税庁「インボイス制度 導入編 消費税の基本的な仕組みから知りたい方へ(令和8年5月)」
- 国税庁「令和8年度税制改正特集」(3割特例・7・5・3割控除)
- 国税庁「令和8年度税制改正特集 3割特例」リーフレット
- 国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要」
- 国税庁「免税事業者がインボイス発行事業者になると、これまでと何が変わりますか?」ほか(新たに事業を開始する方のFAQ)
- 国税庁「D1-64 適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)」
- 国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト「公表サイトによって、屋号で活動している個人事業者の氏名や住所が特定されてしまうのではないでしょうか」
- 財務省・公正取引委員会ほか「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」(令和8年1月30日改正)
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」
制度や数字は記事の公開日(直した記事は更新日)時点の情報です。最新の情報は各公式サイトで確認してください。