転職

目次
  1. 退職代行は3種類。できることが、まるでちがう
  2. 民間の会社が話し合うと、法律違反になりうる
  3. 労働組合なら、話し合いもできる?
  4. 期間の決まりがない契約なら、自分で辞めても結果は同じ。ちがうのはお金と気持ち
  5. 使ったほうがいいのは、どんな人?
  6. 料金は「総額・追加・返金・だれが」の4つで見る
  7. お金をかける前に、無料で話せるところがある
  8. よくある質問

「明日こそ言おう」と思って、もう1か月。夜、スマホで「退職代行」と調べてみた。出てくるのは、弁護士に、労働組合に、ふつうの会社。どれも「即日退職」と書いてあって、ちがいがわからない。でも、ここには大きなちがいがあります。民間の会社にできるのは、「辞めます」と伝えるところまで。有給や残業代の話し合いまでお願いすると、法律の問題になることがあるんです。読み終わるころには、使うかどうか、使うならどこに頼むかが決まります。

この記事でわかること

  • 退職代行の3つの種類と、それぞれができること
  • 民間の会社が「話し合い」をできないわけ(弁護士法72条)
  • 自分で辞めるのと比べて、使ったほうがいいのはどんな人か
  • 料金の調べ方と、申し込む前に見るところ

先に結論

  • 民間の会社にできるのは「辞めます」と伝えるところまで。有給や残業代の話し合いまでやると、法律違反になるおそれがある
  • 会社と話し合うことがありそうなら弁護士。組合は、入った人のためなら会社と話し合えるが、中身のない組合もあると弁護士会が言っている
  • 正社員のように期間の決まっていない契約なら、自分で伝えても2週間で辞められる。先に無料の国の窓口で話してから決めてもいい

メモ

時間がない人へ

05の「使ったほうがいい人」のチェックだけ、やってみてください。どの種類が合うかまで、1分でわかります。

01退職代行は3種類。できることが、まるでちがう

ひとことで「伝えるだけ」か、「話し合いもできる」か。

ことば退職代行

本人の代わりに、会社へ「辞めます」と伝えてくれる有料のサービス。だれがやっているかで、弁護士・労働組合・民間の会社の3つに分かれます。

どれも見た目は似ています。でも、会社に何を言えるかがちがいます。大事なのは「伝えるだけ」なのか、「会社と話し合える(交渉できる)」のか、という点です。

  • 弁護士:「辞めます」を伝えるほか、有給・残業代・退職金などの話し合いも、代わりにできる。裁判になっても頼める
  • 労働組合:その組合に入れば、組合があなたのために会社と話し合える。ただし、組合として中身があることが前提
  • 民間の会社:本人の「辞めます」を、そのまま伝えるところまで。会社と話し合うことはできない

つまり、ちがいが出るのは「会社が何か言い返してきたとき」なんです。じゃあ、なぜ民間の会社は話し合えないのか。

02民間の会社が話し合うと、法律違反になりうる

ひとことでお金をもらって法律の話し合いを代わりにできるのは、原則、弁護士だけ。

弁護士法72条には、こう決まっています。弁護士でない人は、お金をもらう目的で、法律のもめごとの代理や話し合いを仕事にしてはいけない。これを破ることを「非弁行為」と呼びます。

ことば非弁行為(ひべんこうい)

弁護士でない人が、お金をもらって、法律のもめごとを代わりに話し合うことなどを仕事にすること。弁護士法72条で禁じられています。やった側には、2年以下の拘禁刑(刑務所に入る刑)か、300万円以下の罰金があります。

東京弁護士会も、退職代行には非弁行為がまざることがある、と言っています。例に出しているのは、残業代の話。業者が「私が計算すると◯円です」と会社と話し合って、残業代が払われた。これは非弁行為だ、と書いているんです。2025年10月には、法律違反の疑いで、退職代行の運営会社や法律事務所などに強制捜査が入った、とも知らせています。

ほかにも、こんなことが「法律の問題」に入ります。退職金。残っている有給をどう使うか。パワハラの慰謝料(心の傷へのつぐないのお金)。愛媛県の労働委員会も、同じように答えています。残業代を求めることや、有給・最後の日の話し合いを、弁護士でない業者に頼むのはよくない、と。

気をつけて

話が止まって、結局自分で連絡することも

弁護士でない業者が話し合おうとすると、会社が「相手にしない」と連絡を断ることがあります。さっきの東京弁護士会や、愛媛県の労働委員会も、そのことを書いているんです。そうなると、改めて本人が会社に連絡しなければなりません。お金を払ったのに、いちばん避けたかったことが残ってしまうんです。

法律で罰があるのは、業者のほう。でも、困るのは使った本人です。じゃあ、労働組合なら?

03労働組合なら、話し合いもできる?

ひとことで組合に入れば、できることが多い。でも、中身があるかを見る。

労働組合は、組合と、そこに入っている人のために、会社と話し合う力を法律でもらっています(労働組合法6条)。会社が、ちゃんとした理由なしに話し合いを断ることも、だめだと決まっています(7条)。なので、代行をしている組合に入れば、有給や最後の日の話し合いもできる。これが基本の考え方です。つまり、組合の代行を頼むときは、その組合に入ることが前提です。

ただ、東京弁護士会は「組合の話し合いでも、非弁行為にならないとは限らない」とも言っています。とくに注意しているのは、次の2つです。

  • 名前だけの組合:中身がなければ組合とはいえず、会社と話し合う力もない、と東京弁護士会は書いています。県などの審査を受けたという組合でも、中身がないことがあるそうです
  • 会社から組合への「回し」:民間の会社がお金を受け取り、話し合いになったら、つながりのある組合に代わる。この「紹介してつなぐ」ことも、非弁行為になる

組合を選ぶなら、2つを見ておきましょう。申し込みもお金の受け取りも、その組合がやっているか。組合に入る手続きがあるか。しくみがややこしいと感じたら、弁護士のほうが話は早いです。

ポイント

裁判になりそうなら、弁護士だけ

労働組合ができるのは、会社との話し合いまで。払われていない残業代やパワハラの慰謝料で、裁判までいきそうなら、代わりに動けるのは弁護士です。

04期間の決まりがない契約なら、自分で辞めても結果は同じ。ちがうのはお金と気持ち

ひとことで期間の決まっていない契約なら、自分で伝えても、2週間たてば辞められる。

ここで、そもそもの話をひとつ。民法627条では、期間を決めずに働く契約なら、いつでも辞めると申し出られます。そして、申し出た日の翌日から数えて2週間たつと、契約は終わります。厚生労働省のサイトにも、会社が「認めない」と言っても、原則として2週間たてば契約は終わる、と書いてあります。

2週間

期間の決まっていない契約で、辞めると伝えてから、辞められるまで出典:民法627条1項

退職代行を使っても、この2週間のルールは変わりません。だれが伝えても、辞められることは同じなんです。ちがうのは、お金がかかるかどうかと、会社の人と話さずにすむかどうか。並べるとこうなります。

自分で伝える? 代わりに伝えてもらう?

自分で伝えるお金はゼロ

いいところ

  • 費用がかからない
  • 辞める日や引き継ぎを、直接相談できる
  • 困ったら、国の無料の窓口が手伝ってくれる

気をつけること

  • 上司と話すのが、気持ちのうえでつらい
  • 引き止められると、言い出しにくくなる

退職代行を使う有料

いいところ

  • 会社の人と、直接話さずにすむ
  • 弁護士なら、有給や残業代のことも話し合ってもらえる

気をつけること

  • 自分でやればかからなかったお金が出ていく
  • 民間の会社だと、話がこじれたときに頼れない
  • 書類の受け取りなどで、結局自分が会社とやりとりすることもある

契約社員のように期間が決まっている人は、途中で辞めるのに「やむを得ない理由」がいります(民法628条)。ただし1年を超える契約なら、1年たったあとはいつでも辞められます(労働基準法の附則137条。専門の知識がある人・60歳以上の人・工事などが終わるまでの契約は別)。法律が変わるまでの、今の決まりです。まず、契約の期間を見ておきましょう。

自分で伝える順番や言い方は、退職の伝え方の記事にまとめています。この記事では、代行を使うならどう選ぶかを続けます。

05使ったほうがいいのは、どんな人?

ひとことで「会えない理由」がはっきりしているなら、使っていい。

代行を使うのは、悪いことではありません。お金を払ってでも、会社の人と話さずにすむ。その価値が大きい人もいます。当てはまるものをタップしてみてください。

当てはまるものをタップしてみてください

当てはまったのは 0 / 5個

使うと決めたら、次は「会社と話し合うことがあるか」を見ます。これで、どれを選ぶかが決まります。

  • 辞めると伝えるだけでいい(有給は使い切った・お金のもめごともない)→ どの種類でもOK。料金と、だれがやっているかで選ぶ
  • 有給を使ってから辞めたい・最後の日を相談したい → 話し合いがいるので、弁護士か、中身のある組合
  • 払われていない残業代・パワハラ・退職金の話がある → 弁護士。裁判まで見すえて頼める

気をつけて

パワハラを受けているなら、記録を残しておこう

辞めたあとに慰謝料などを考えるなら、日付と言われたことのメモが、あとで役に立ちます。ひとりで判断しなくて大丈夫です。パワハラの記事に、記録の残し方と相談先をまとめています。

06料金は「総額・追加・返金・だれが」の4つで見る

ひとことで安さより、何にいくらかかって、だれが動くのか。

この記事では、料金の相場の数字はのせていません。国などがまとめた、信頼できる数字が見つからなかったからです。そのかわり、申し込む前に見るところを順番に並べます。

申し込む前に、サイトで見る5つ

  1. だれがやっているか(名前・住所・電話番号)を見る

    ネットで申し込むサービスには、特定商取引法(ネット販売などのルール)があります。名前・住所・電話番号、値段のほかにかかるお金、やめるときの条件などを、広告に書く決まりです。名前や住所は「求められたらすぐ出します」と書いて、省くこともできます。「特定商取引法に基づく表記」を探し、なければ問い合わせを。答えてくれないところは、選ばないのが安心です。

  2. 税込みの総額を見る

    「◯円〜」と書いてあるときは、自分の場合いくらになるかを問い合わせます。メールなど、文字で返事をもらっておくと、あとで見返せます。

  3. 追加の料金がないかを見る

    法律では、値段のほかにお客さんが払うお金があれば、その中身と金額を書くことになっています。弁護士の場合は、相談料のほか、着手金(頼んだときに払うお金)や報酬金(うまくいったときに払うお金)などがあります。総額でいくらかを確かめてください。

  4. 返金の条件を見る

    辞められなかったとき、お金が戻るのか。戻るなら、どんな条件か。ここを読まずに払わないようにしましょう。

  5. 会社に連絡するのは、だれかを見る

    弁護士なら、日本弁護士連合会の「弁護士検索」を使います。登録されている弁護士の情報が見られます。労働組合なら、申し込みもお金の受け取りも、その組合がやっているか。民間の会社なら、話し合いが必要になったとき、どうなるのかを聞いておきます。

メモ

着手金は、うまくいかなくても戻らない

日本弁護士連合会によると、着手金は、うまくいってもいかなくても返ってこないお金です。そのかわり報酬金は、まったくうまくいかなかったときは払わなくてよいもの。頼む前に、両方の金額を聞いておくと安心です。

とはいえ、お金を払う前にできることもあります。次は、無料で話せるところです。

07お金をかける前に、無料で話せるところがある

ひとことで国の窓口と法テラスは、相談するだけならお金はかからない。

退職代行に払うお金は、自分で伝えればかからないお金です。だからこそ、先に無料の窓口で聞いてみる価値があります。「代わりに伝えてほしいほどつらい」と、そのまま話してOKです。

378か所

国の無料の窓口(総合労働相談コーナー)。予約はいらない

3回

法テラスで、同じことを無料で弁護士に相談できる回数(1回30分)

出典:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」、法テラス「無料法律相談のご利用の流れ」
  • 総合労働相談コーナー:国がやっている窓口で、労働局などの中にある。会っても電話でも、無料で話せる。働く条件のもめごとなら、労働局の「あっせん」(間に人が入る話し合い)もここで申し込める。払われていない給料は労働基準監督署の担当になることもあるので、どちらが合うかは窓口で聞く。お金はかからないが、会社が出てこなければ打ち切り。「辞めます」と代わりに伝えるものではない
  • 労働条件相談ほっとライン(0120-811-610):平日は17〜22時、土日・祝日は9〜21時。無料で、名前を言わずに話せる
  • 法テラス:国がつくった、法律の相談先。収入と貯金が決まった額より少なければ、弁護士に無料で相談できる(予約が基本)。東京23区などで1人暮らしなら、ボーナスも含めた手取りの平均月収が200,200円以下、貯金180万円以下が目安
  • 消費者ホットライン(188):代行の会社と、お金のことでもめたときに。近くの消費生活センターにつながる

法テラスの問い合わせは、サポートダイヤル(0570-078374。平日9〜21時、土曜9〜17時)から。この目安は、どこに住んでいるかや、家族が何人かで変わります。

気をつけて

眠れない・食べられないが続いているなら

辞め方を考えるより先に、休むことと相談することを選んでください。厚生労働省の「こころの耳」には、電話やSNSで話せる窓口がまとまっています。辞める手続きは、少し元気が戻ってからでも間に合います。

08よくある質問

Q代行を使っても、会社から自分に連絡が来ることはある?

A来ることはあります。とくに、会社が業者と話すのを断ったときは、本人が連絡しなければならなくなります。連絡を受けたくない理由があるなら、申し込む前に「会社から本人に連絡が来たらどうするか」を聞いておきましょう。

Q代行で辞めたら、会社からお金を請求される?

A期間の決まっていない契約なら、伝えてから2週間で契約は終わります。だれが伝えたかで、このルールは変わりません。ただ、期間の決まった契約は別です。やむを得ない理由なく途中で辞めて、会社に損が出たら、つぐないを求められるおそれがあります。厚生労働省のサイトにも、そう書いてあります。ただし1年を超える契約なら、1年たったあとはいつでも辞められます。専門の知識がある人や60歳以上の人、工事などが終わるまでの契約は、これに当てはまりません。心配なら、法テラスや弁護士に相談してください。

Q辞めたあとの書類は、ちゃんともらえる?

A「退職証明書」は、こちらが求めれば、会社が遅れずに出すことになっています(労働基準法22条)。書いてもらえるのは、働いた期間・仕事の種類・役職・お給料・辞めた理由のうち、自分が求めたところだけ。保険や年金の切り替えに使う書類は、これとは別です。何がいつ届くかは、退職前にやることリストで確かめておくと安心です。

Q退職代行を使うのは、甘え?

Aそうは思いません。会社の人と話せないほどつらいなら、自分を守るための選び方のひとつです。ただ、お金はかかります。払う前に、無料の窓口で一度話してみるのが、WE POPのおすすめです。

今日の最初の一歩

今夜、「会社と決めたいこと」を3つ書き出す

スマホのメモに「有給の残り」「最後の出社日」「払われていないお金」の3つを書きます。それぞれ、会社と決めたいなら◯、なければ×。5分で終わります。全部×なら伝えるだけでいい。1つでも◯なら、話し合いができる相手(弁護士など)を選びます。

2026.10.10 公開 文・WE POP編集部

参考にした情報

制度や数字は記事の公開日(直した記事は更新日)時点の情報です。最新の情報は各公式サイトで確認してください。

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