仕事

目次
  1. そもそも、パワハラってどこからが?
  2. パワハラには、よくある6つの形がある
  3. 厳しい指導と、どこがちがう?
  4. 今の自分、当てはまる?
  5. まずは記録。何を、どう残す?
  6. 相談しないまま、ひとりで抱えていない?
  7. どこに相談すればいい?
  8. よくある質問

みんなの前で大きな声で怒られる。自分だけ打ち合わせに呼ばれない。家に帰っても、上司の言葉が頭から離れない。「でも、自分ができないのが悪いのかも」と、つい飲みこんでしまう。そんな人に向けて書きました。パワハラかどうかを、ひとりで決めなくて大丈夫です。読み終わるころには、今日から何をすればいいかがわかります。

この記事でわかること

  • 法律では、どんなものが「パワハラ」になるのか
  • パワハラによくある6つの形と、厳しい指導とのちがい
  • あとで困らない、記録の残し方
  • 会社の窓口と、国の無料の相談先

先に結論

  • 法律でいうパワハラは3つの条件が全部そろったもの。でも、相談はそう決まる前からできる
  • まずは記録。いつ・どこで・誰が・何をしたかを、忘れないうちにメモする
  • 会社で言いにくいときは、労働局の総合労働相談コーナーへ。無料で、電話でも話せる

メモ

時間がない人へ

05の「記録の残し方」だけでも読んでください。今日からできて、あとでいちばん役に立ちます。

01そもそも、パワハラってどこからが?

ひとことで法律では、3つの条件が全部そろったものをパワハラと呼ぶ。

パワハラには、法律での決まりがあります。「労働施策総合推進法」という法律で、会社にパワハラを防ぐ対策をとることが義務になりました。大きな会社は2020年6月から、中小企業も2022年4月からです。

国(厚生労働省)が会社向けに出している「指針」(ルールの説明書)では、次の3つが全部そろったものをパワハラとしています。

パワハラの3つの条件

  1. 立場の強さを背景にしている

    言われた人が、逆らったり断ったりしにくい関係で起きること。上司だけではありません。仕事に詳しくて、その人がいないと回らない同僚や部下も入ります。同僚が集団でやる場合も同じです。

  2. 仕事に必要な範囲を超えている

    明らかに仕事に必要ない、または、言い方ややり方が、ふつう許される範囲をこえているもの。何度も、何人もで責める、といった「回数や人数」も見られます。

  3. 働く環境が害されている

    体や心に苦痛を受けて、仕事をするうえで見過ごせないほどの支障が出ていること。ふつうの働く人が同じ立場ならどう感じるか、で考えます。

メモ

パートや派遣の人も入る

ここでいう「働く人」には、正社員だけでなく、パート、アルバイト、契約社員も含まれます。派遣で働く人は、派遣元と派遣先の両方が対策をとる側になります。公務員は扱いが一部ちがい、あとで紹介する労働局の「助言・指導」や「調停」は使えません。会社の役員やフリーランスの人は、この法律でいう「働く人」には入りません。

80,969件

全国の労働局に寄せられた、パワハラを防ぐ法律(労働施策総合推進法)についての相談(2025年度)出典:厚生労働省「令和7年度 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)における雇用均等関係法令の施行状況」

前の年より11.2%増えました。このうち、パワハラについての相談は77,514件。その約4割は、法律や制度の中身についての問い合わせです。

02パワハラには、よくある6つの形がある

ひとことで殴る・怒鳴るだけじゃない。無視や「仕事をくれない」も入る。

国の指針は、パワハラによくある形を6つに分けています。それぞれ、指針に書かれた例を短くしてのせます。

  • ① 身体的な攻撃:殴る、ける、物を投げつける
  • ② 精神的な攻撃:人格を否定する。みんなの前で大声で怒鳴るのをくり返す。必要以上に長い時間、何度も責める
  • ③ 人間関係からの切り離し:気に入らない人を長い間ひとりで別の部屋に置く。同僚が集団で無視する
  • ④ 過大な要求:新卒で入った人に、必要なことを教えないまま、とても無理な目標を課して厳しく責める。仕事と関係ない私用をやらせる
  • ⑤ 過小な要求:嫌がらせで仕事を与えない。管理職を辞めさせるために、誰でもできる仕事をさせる
  • ⑥ 個の侵害:会社の外でもずっと見張る。病気などの個人的なことを、本人に断りなくほかの人に話す

指針には、これは「例」であって全部ではない、とも書かれています。6つにぴったり当てはまらなくても、パワハラになることはあります。

03厳しい指導と、どこがちがう?

ひとことで注意そのものはOK。問題は「仕事に必要か」と「やり方」。

仕事のために必要で、やり方もふつうの範囲なら、厳しめの指導でもパワハラにはなりません。国の指針にも、そうはっきり書かれています。並べてみると、ちがいが見えてきます。

パワハラになりうる

いいところ

  • 人格を否定する言い方
  • みんなの前で、大声で怒鳴るのをくり返す
  • 新人なのに教えてもらえないまま、無理な目標で責められる
  • 嫌がらせで、仕事をまったく任されない

気をつけること

  • 1回だけか続いているかなど、状況で判断が分かれることがある

パワハラになりにくい

いいところ

  • 何度注意しても遅刻が直らない人に、少し強めに注意する
  • 育てるために、今より少し上の仕事を任せる
  • 忙しい時期に、いつもより多めの仕事を任せる
  • その人の能力に合わせて、仕事の量や中身を軽くする

気をつけること

  • 言い方や長さによっては、指導でも行き過ぎになる

どちらか迷う場合こそ、ひとりで判断しないで相談してください。会社の相談窓口には、事実を確かめて対応する義務があります。

ポイント

自分を責めなくていい

仕事でミスをしたことと、ひどい扱いを受けていいかは別の話です。ミスへの注意は必要でも、人格を否定していい理由にはなりません。

04今の自分、当てはまる?

ひとことで数は目安。強い苦痛を受けたなら、1回でもパワハラになりうる。

この1か月を思い出して、当てはまるものをタップ

当てはまったのは 0 / 7個

05まずは記録。何を、どう残す?

ひとことでいつ・どこで・誰が・何を・何のために・どのように。忘れないうちに書く。

厚生労働省のサイト「あかるい職場応援団」は、記録を残すようすすめています。書くのは「いつ・どこで・誰が・何を・何のために・どのように」したのか。会社や労働局に相談したとき、何があったかを確かめる材料になるからです。

記録の残し方

  1. 日時と場所を書く

    「10月2日(金)15時ごろ、3階の会議室」のように。日付は、思い出した日ではなく、起きた日を書きます。

  2. 誰が、何を、どのようにしたかを書く

    言われた言葉は、できるだけそのまま書きます。「ひどいことを言われた」より「『お前は何をやってもダメだ』と言われた」のほうが伝わります。大声だった、みんなの前だった、なども書いておきます。

  3. 何のためだったかを書く

    相手が何のつもりでそうしたのか。「ミスの注意として」「理由の説明はなかった」など、わかる範囲でOKです。

  4. まわりに誰がいたか、自分がどうなったかも書く

    見ていた人の名前や、そのあと眠れなかった、病院に行った、なども残しておくと、あとで状況を伝えやすくなります。

「あかるい職場応援団」では、メモや録音など、やりやすいやり方で残すことをすすめています。WE POPからのおすすめは、記録用のノートをスマホのメモに1つつくって、その日のうちに書くこと。メールやチャットで言われたことは、画面を写真に撮っておくと安心です。病院に行ったなら、診断書や領収書も捨てずに取っておきましょう。

気をつけて

WE POPのおすすめ:会社のパソコンだけに残さない

会社のパソコンやアカウントの中だけにあると、異動や退職のときに見られなくなることがあります。ただ、会社の資料を勝手に持ち出すと、別の問題になることも。迷ったら、相談窓口で残し方を聞いてみてください。

06相談しないまま、ひとりで抱えていない?

ひとことでパワハラを受けた人のうち、いちばん多いのは「何もしなかった」。

働く人8,000人に聞いた国の調査では、この3年でパワハラを受けたと答えた人が19.3%。だいたい5人に1人です。では、受けたあとにどうしたのか。いちばん多かったのは「何もしなかった」でした。

パワハラを受けたあとにしたこと(いくつでも・15項目から7つ)
何もしなかった36.9%
家族や社外の友人19.3%
社内の同僚18.3%
社内の上司17.9%
会社を辞めた14.9%
社内の相談窓口4.5%
公的な機関3.1%

出典:厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」労働者調査(パワハラを受けたと答えた1,546人)。15の選択肢から7つを抜き出しています。「公的な機関」は労働局・労働基準監督署など。「会社を辞めた」には、辞めたあと今は働いていない人は入っていません(調査の対象外)

「会社を辞めた」の14.9%には、辞めたあと今は働いていない人が入っていません。実際に辞めた人は、もっと多い可能性があります。

何もしなかった理由でいちばん多いのは「何をしても解決にならないと思ったから」(65.6%)。気持ちはよくわかります。でも、労働局などの公的な窓口に相談した人は3.1%だけ。国の窓口を使った人は、とても少ないんです。

メモ

相談したことで、不利な扱いをしてはいけない

会社には、相談した人のプライバシーを守ることが義務づけられています。相談したことを理由に、クビにしたり給料を下げたりすることは、法律で禁止されています。

07どこに相談すればいい?

ひとことで社内で話しやすい人 → 会社の窓口 → 国の窓口、の順に考える。

  1. その1

    信頼できる同僚や上司

    まわりの協力があると、相手が自分のしていることに気づく場合もあります。上司に話しにくいなら、次の人事部や会社の窓口へ。

  2. その2

    人事部や、会社の相談窓口

    パワハラの相談窓口をつくることは、会社の義務です。会社は窓口を働く人に知らせることになっています。社内のお知らせなどで、連絡先を探してみてください。

  3. その3

    労働局の総合労働相談コーナー

    会社に窓口がない、話しても変わらない、ならここへ。都道府県の労働局や労働基準監督署の中にあります。無料・予約なしで、電話でも話せます。

  4. その4

    労働局に、会社との間に入ってもらう

    会社の対応に納得できないときは、労働局長の「助言・指導・勧告」や、専門家が間に入る「調停」を頼めます。話し合う相手は上司ではなく、会社です。扱うのは、会社のパワハラ対策や、相談したあとの対応に問題がなかったか。会社には、労働局から連絡が行きます。無料で、内容は外に出ません。使ったことを理由に不利な扱いをするのも禁止です。ただ、会社が話し合いに加わらないと、途中で打ち切りになります。パワハラがあったかどうかを調べて判定する制度でもありません。

1,675件

労働局長に解決の手助けを頼んだ件数

692件

調停を申し込んだ件数

出典:厚生労働省「令和7年度 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)における雇用均等関係法令の施行状況」パワハラ関係

気をつけて

眠れない・食べられないなら、先に休むことを

体や心のサインが出ているなら、解決より先に、あなたを守ることを選んでください。厚生労働省の「こころの耳」には、電話やSNSで話せる窓口がまとまっています。法律の手続きを知りたいときは、国がつくった「法テラス」でも相談先を探せます。

08よくある質問

Q相手がパワハラだと認めなかったら、相談しても意味がない?

A相談するのに、パワハラだと決まっている必要はありません。国の指針でも、会社の窓口は、パワハラにあたるか微妙な場合も広く相談を受けるよう求められています。だからこそ、記録があると話が進みやすくなります。

Q相談したことが、相手にバレない?

A会社には、相談した人のプライバシーを守る義務があります。相手に話を聞く前に、どこまで伝えていいかを窓口と確かめておくと安心です。労働局に相談するときも、会社に知られたくないなら、最初にそう伝えてください。ただ、労働局の助言・指導や調停を頼むと、会社に連絡が行きます。

Qお客さんからの暴言は、パワハラに入る?

Aお客さんなどからのひどい言動は「カスタマーハラスメント」と呼ばれ、パワハラとは別の扱いです。2026年10月1日から、会社はカスハラへの対策もとることが義務になりました。こちらも会社の窓口や労働局に相談できます。

Qもう辞めたい。辞めてもいい?

A辞めるのは、ぜんぜん悪いことではありません。ただ、勢いで伝える前に、記録を手元に残しておいてください。辞める前にやっておくことは、別の記事にまとめています。心や体が限界なら、まず休むことを選んでください。

今日の最初の一歩

今日、スマホのメモに「記録用」のノートをひとつつくる

最近いちばん気になったできごとを1つだけ、日時・場所・言われた言葉・まわりにいた人の順に書いてみてください。5分で終わります。書くだけで、頭の中が少し軽くなることもあります。

2026.10.04 公開/2026.10.05 更新 文・WE POP編集部

参考にした情報

制度や数字は記事の公開日(直した記事は更新日)時点の情報です。最新の情報は各公式サイトで確認してください。

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