仕事

目次
  1. 引かれるお金は、2種類ある
  2. 働かなかった分は、引かれても違法じゃない
  3. 月給22・25・30万円で、いくら引かれる?
  4. 5分の遅刻で30分ぶん引くのは、「引きすぎ」
  5. 罰としての減給には、上限が2つある
  6. 明細の「控除」、あやしくない?
  7. おかしいと思ったら、国の窓口にタダで聞ける
  8. よくある質問

電車が止まって、15分の遅刻。風邪で1日休んだ月もある。給料日に明細を見ると「欠勤控除」という行があって、「これ、合ってるの?」と思う。じつは、引かれるお金には2つの種類があります。しかも、5分の遅刻を30分として引くのは、国の資料では「ただの差し引き」とは別もの。読み終わるころには、明細の数字が合っているかを、自分の電卓で確かめられます。

この記事でわかること

  • 遅刻や欠勤で引かれるお金の、2つの種類
  • 月給22・25・30万円で、1日休むといくら引かれるか
  • 「引きすぎ」になる線と、罰としての減給の上限
  • おかしいと思ったときの、国の無料の相談先

先に結論

  • 働かなかった分を引くのは、会社のルールどおりならOK。計算のしかたは会社ごとにちがう
  • 働かなかった時間を1円でも超えて引くと、その分は罰としての減給(減給の制裁)になる
  • 罰としての減給は、1回で平均賃金の1日分の半分まで、ひと月で給料の10分の1まで

メモ

時間がない人へ

03の計算例で、自分の月給に近い数字を見てください。そのあと06のチェックをタップすれば、1分で終わります。

01引かれるお金は、2種類ある

ひとことで「働かなかった分」と「罰としての減給」は、ルールがまるでちがう。

遅刻や欠勤のあとに、引かれるお金。明細では同じように見えますよね。でも、中身は2つに分かれます。

働かなかった分を引くよくあるのはこっち

いいところ

  • 遅れた時間・休んだ日の分だけ引く
  • 国の上限(10分の1など)はかからない
  • 計算のしかたは、会社のルールブックに書いてある

気をつけること

  • 時間を超えて引くと、超えた分は罰の扱いになる
  • そもそも引かないルールの会社もある

罰としての減給

いいところ

  • 働いた分まで、罰として減らすこと
  • 1回の額にも、ひと月の合計にも上限がある

気をつけること

  • ルールブックに書いていないと、できない
  • 上限を超えたルールは、その部分が無効

ルールブックは「就業規則」のこと。給料や休みなど、職場のルールをまとめたものです。

線になるのは、働かなかった時間の分を超えるかどうか。まずは「働かなかった分」から見ていきましょう。

02働かなかった分は、引かれても違法じゃない

ひとことでただし、引くかどうかも、どう計算するかも、会社のルールしだい。

国(厚生労働省)は、会社がルールを作るときの見本「モデル就業規則」を出しています。その解説には、こうあります。欠勤や遅刻で働かなかった分は、給料を払わなくていい。だから、その分を減らしてもいい、と。

ことばノーワーク・ノーペイ

「働かなかった分は、払わなくていい」という考え方の呼び名です。じつは、この名前の条文があるわけではありません。民法624条の「働いたあとでないと、給料をもらう権利がない」という決まりから、こう説明されています。

ただ、この決まりは、会社と働く人が別のルールを決めれば、そちらが先です。たとえば、遅刻や欠勤をしても引かない「完全月給制」の会社もあります。

計算のしかたも、会社によってバラバラ。国の資料には、たとえばこんな形が出てきます。

  • 1時間分は、基本給 ÷ ひと月の平均の働く時間(モデル就業規則の例)
  • 1日分は、月給 ÷ その月の働く日数(労働局の資料にある、会社の都合で休みにした日の例)
  • 1日分は、月給 ÷ 1年でならしたひと月の働く日数(同じ資料で「これでもいい」とされている)

ここでの「働く時間・日数」は、会社が決めたもののこと。残業は入りません。どの手当まで引く対象にするかも、会社ごとに決めます。

ポイント

まずは、自分の会社の書き方を見る

ルールブックの「賃金(給料)」のところか、別の「賃金規程」に、たいてい「欠勤等の扱い」のような項目があります。ここに式があれば、明細の数字を自分で確かめられます。

03月給22・25・30万円で、いくら引かれる?

ひとことで月給25万円なら、1日休むと約1.2万円。30分の遅刻なら約770円。

ここでは、モデル就業規則と同じ式で出してみます。前提はこの3つ。会社によって式も前提もちがうので、目安として見てくださいね。 なお、この記事は、会社に雇われて月給で働く人の話です。時給や日給の人は、計算の式がちがいます(罰としての減給の上限は同じ)。業務委託やフリーランスの人には、この法律の上限は当てはまりません。

  • 月給は、全部基本給(ほかの手当はない)
  • 1日8時間、1年の休みは120日
  • ひと月の平均の働く時間は、(365日-120日)×8時間÷12で、約163.3時間
1日(8時間)休んだときに引かれる額
月給22万円10,776円
月給25万円12,245円
月給30万円14,694円

出典:厚生労働省「モデル就業規則(令和7年12月版)」第45条の式で WE POP が計算。年間休日120日・1日8時間の場合

673円

月給22万円で、30分の遅刻

765円

月給25万円で、30分の遅刻

918円

月給30万円で、30分の遅刻

出典:同じ前提で WE POP が計算。1時間あたりは約1,347円・約1,531円・約1,837円。1円未満は四捨五入

自分の数字でも、3つのステップで出せます。

  1. 1年の休みの日数と、1日の働く時間を見る

    労働条件通知書か、ルールブックに書いてあります。会社のカレンダーで数えてもOK。

  2. 1時間あたりの額を出す

    基本給 ÷((365-休みの日数)× 1日の時間 ÷ 12)。月給25万円・休み120日・8時間なら、約1,531円です。

  3. 休んだ時間をかける

    1日休んだなら×8、30分の遅刻なら×0.5。明細の数字と比べて、大きくずれていないかを見ます。

メモ

「その月の日数で割る」会社だと、月ごとに変わる

1日分を、その月の働く日数で割る会社もあります。月給25万円なら、21日ある月は約11,905円。19日の月は約13,158円。同じ1日でも、月によって引かれる額がちがうのはこのためです。

ここまでは「働かなかった分」の話。じゃあ、働かなかった時間より多く引かれていたら?

045分の遅刻で30分ぶん引くのは、「引きすぎ」

ひとことで超えた25分は、ただの差し引きならアウト。罰としての減給のルールの中でだけ、許される。

「遅刻は30分単位で引く」という職場、ありますよね。これについては、国の通達(役所の考え方を示した文書)が、はっきり書いています。

メモ

国の通達(1988年)

5分の遅刻を30分として引くと、超えた25分の分は、給料を「全額払う」という原則に反して違法。ただし、ルールブックに決めた罰としての減給で、法律(91条)の上限の中なら、この原則には反しない。

モデル就業規則の解説にも、同じことが書いてあります。遅れた時間の分を超えて減らすと、罰の扱いになる、と。山梨労働局の解説では、超えた額がたとえ1円でも、その分は罰としての減給になる、としています。

128円

月給25万円で、5分の遅刻の分

765円

30分として引いたときの額

638円

超えた25分の分(=罰の扱い)

出典:国の通達(昭和63年3月14日 基発第150号)の例に、03と同じ前提を当てはめて WE POP が計算。1円未満を四捨五入しているので、765−128とは1円ずれる

「遅刻3回で、1日休んだ分を引く」というルールは?国の資料に、この形を名指しした説明は見つかりませんでした。ただ、同じ考え方を当てはめると、遅れた時間の合計を超えて引く部分は、罰としての減給にあたると考えられます。

反対に、5分の遅刻で5分の分だけ引くのは、ふつうの差し引き。では、罰としての減給には、どこまでの上限があるのか。

05罰としての減給には、上限が2つある

ひとことで1回は、平均賃金の1日分の半分まで。ひと月の合計は、給料の10分の1まで。

法律(労働基準法91条)は、罰としての減給に上限をつけています。2つの上限は別々にかかって、どちらを超えてもダメです。

1/2

1回の減給は、平均賃金の1日分の半分まで

1/10

ひと月(1回の給料日の分)の合計は、その月の給料の総額の10分の1まで

出典:労働基準法 第91条

ことば平均賃金

法律(12条)で決まっている「1日あたりの給料」です。ふつうは、直前の3か月に払われた給料の合計を、その3か月の日数で割ります。日数は、土日も入れたカレンダーの日数。残業代も合計に入りますが、ボーナスなどは入りません。入社して3か月たっていない人は、入社してからの期間で出します。

月給25万円で、毎月の給料がずっと同じ人で出してみます。直前の3か月が92日だったとすると、こうなります。

  • 平均賃金は、25万円×3か月÷92日で、約8,152円
  • 1回の減給の上限は、その半分の約4,076円
  • ひと月の合計の上限は、欠勤のない月なら25万円の10分の1で、2万5,000円

同じ前提なら、月給22万円の人は1回が約3,587円まで。30万円の人は約4,891円までです。ひと月の合計は、それぞれ2万2,000円と3万円まで。

気をつけて

「給料の2割カットを3か月」は、上限を超える

ひと月の減給の合計は、その月の給料の総額(残業代や手当も入れた額)の10分の1まで。上限を超えるルールは、その部分が無効です(同じ法律の92条)。超えて引かれた分は、もともと、あなたがもらえるはずのお金。ひとりで抱えずに、07の相談先に聞いてみてください。

それに、罰としての減給は、ルールブックに書いていないとできません。山梨労働局の解説は、減給は処分の中でも重いほうだと書いています。たった1回の遅刻で減給するのは、合理的かどうか疑問が残る、とも。

ちなみに、ボーナスを罰として減らすときも、同じ上限がかかります。一方で、評価の期間に働かなかった分だけボーナスを減らすのは、罰としての減給にはあたりません(厚生労働省のQ&A)。降格で仕事が変わり、給料の表が変わって下がるのも、同じです。

06明細の「控除」、あやしくない?

ひとことで当てはまるものがあれば、ルールブックを見て、数字を確かめる。

当てはまるものをタップしてみてください

当てはまったのは 0 / 6個

明細のほかの行(税金や保険料)の読み方は、給与明細の記事にまとめています。

07おかしいと思ったら、国の窓口にタダで聞ける

ひとことで総合労働相談コーナーは、予約なし・無料で話を聞いてくれる。

  1. 明細とルールブックを手元に置く

    遅れた日と時間、休んだ日をメモしておきます。勤怠アプリの画面のスクショもおすすめです。

  2. 人事や総務に、計算のしかたを聞く

    責めるような聞き方ではなく、「どの式で出していますか?」と聞けばOK。ただの計算ミスなら、ここで直ることも多いです。

  3. 納得できなければ、総合労働相談コーナーへ

    各地の労働局や、全国の労働基準監督署の中などにある国の窓口です。予約はいらず、無料。電話でも話せます(土日・祝日はお休み)。

  4. 法律に反していそうなら、監督署につないでもらう

    そんなときは、相談コーナーが、指導できる監督署などにつないでくれます。

気をつけて

引きすぎた分を求められるのは、3年まで

給料は、給料日から3年たつと請求できなくなります(2020年4月から後の給料日の分)。法律では5年ですが、当分のあいだは3年です。気になる月があったら、明細は捨てずにとっておきましょう。

残業代がちゃんと出ているかも、同じ明細でわかります。くわしくは残業代の記事へ。

08よくある質問

Q電車の遅れで遅刻しても、給料は引かれる?

A働かなかった時間なので、引かれることはあります。遅延証明書をどう扱うかは、会社のルールしだい。ルールブックを見るか、職場の人に聞いてみてください。

Q体調が悪くて休んだ日を、有給休暇にできる?

A有給休暇を使えば、その日もお金が出るので、引かれません。ただ、当日の連絡で有給にできるかは、会社のルールしだい。有給のルールは有給休暇の記事で書いています。

Q「遅刻1回で罰金3,000円」と言われました

A給料から引くなら、罰としての減給にあたります。ルールブックに書いてあること。1回が平均賃金の1日分の半分以内で、ひと月の合計が給料の10分の1以内であること。この3つが必要です。あやしいと思ったら、07の相談先に聞いてみてください。

Q引かれたくないから、遅刻を黙っていてもいい?

Aおすすめしません。時間をごまかすと、遅刻よりも大きな問題になりかねません。遅れるとわかった時点で連絡しておくほうが、話がこじれないと考えています。

今日の最初の一歩

今月の給与明細を開いて、「控除」の行を1つ電卓で確かめる

遅刻や欠勤の分があれば、03の式で出してみてください。なければ、ルールブックの「欠勤等の扱い」に何と書いてあるかを、社内のサイトで探すだけでもOKです。

2026.10.12 公開 文・WE POP編集部

参考にした情報

制度や数字は記事の公開日(直した記事は更新日)時点の情報です。最新の情報は各公式サイトで確認してください。

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