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給料日。明細の残業代を見て「あれ、これだけ?」と思った。先月は、けっこう遅くまで残っていたのに。求人票にあった「みなし残業20時間」も、よく考えると何のことかわからない。そんな人に向けて書きました。残業代は、電卓ひとつで出せます。読み終わるころには、あなたの残業代が合っているかを確かめられるようになります。
この記事でわかること
- どこからが「残業」になるのか
- 深夜や休日だと、いくら増えるか
- 月給から、残業代を出すには
- みなし残業・管理職のときと、相談できるところ
先に結論
- 時間外の割増がつくのは1日8時間・週40時間をこえたぶん。こえたぶんは1.25倍以上(深夜や休日の割増は別)
- 残業代は時給×割増率×時間。月給24万円(年間休日125日・1日8時間)で残業20時間なら37,500円
- みなし残業でも、決まった時間をこえたぶんは別に払われる。合わなければ無料の窓口へ
01どこからが「残業」になるの?
ひとことで法律の線は、1日8時間・週40時間。定時とは別ものです。
まず知っておきたい「時間」が、2つあります。ひとつは法律の上限で、休憩をのぞいて1日8時間・1週40時間。これを法定労働時間といいます(10人未満のお店や旅館など、決まった業種には週44時間でよい特例もあります)。
ことば所定労働時間
もうひとつ。会社が決めた、ふだん働く時間で、いわゆる定時のことです。就業規則(会社のルールブック)などに書いてあります。
時間外の割増がつくのは、法律の線をこえたぶんだけ(深夜や法定休日の割増は、別にあります)。定時が9時〜17時(休憩1時間)なら、17時〜18時はまだ8時間の中です。割増はつかず、そのぶんの給料がふつうに払われます。ちょっと意外ですよね。
反対に、1日8時間以内でも、1週間で40時間をこえたら、そのぶんは割増になります。
この線をこえて働かせるには、会社と働く人の代表が36協定(サブロクきょうてい)を結び、労働基準監督署に届け出ます。残業の長さにも、上限があります。
13.2時間
パートでない人の、1か月の残業と休日出勤の平均(2025年)
45時間
1か月の上限(ふつうのとき)
360時間
1年の上限(ふつうのとき)
特別な事情があっても、こえられない線があります。時間外は1年で720時間まで。休日出勤も入れて月100時間未満、2〜6か月の平均で80時間以内。月45時間をこえていいのは、年6か月までです。
02深夜や休日は、いくら増える?
ひとことでふつうは1.25倍。深夜・休日・月60時間超で、もっと増える。
割増の率は、法律で最低ラインが決まっています。これより高くするのはかまいませんが、低くはできません。
25%
法律の線をこえた時間外(残業)
25%
22時〜翌5時の深夜
35%
法定休日に働いたとき
時間外が月60時間をこえたら、こえたぶんは50%以上です。中小企業も、2023年4月からこのルールになりました。重なると、率は足し算です。
出典:労働基準法第37条、労働基準法施行規則第20条。「60時間超」は、時間外のうち月60時間をこえた分
数字ばかりで、目がまわりそうですよね。1日の流れで見てみましょう。
定時が9時〜18時の人が、夜まで残ったら
- 9:00〜18:00
定時の8時間
休憩1時間をのぞいた8時間。ここまでは、ふだんの月給のぶんです。
- 18:00〜22:00
残業は1.25倍以上
8時間をこえたところから、割増がつきます。
- 22:00〜翌5:00
深夜の残業は1.5倍以上
深夜の25%が上乗せされます。月60時間をこえたぶんなら、1.75倍以上です。
メモ
土曜に働いても、35%とはかぎらない
35%になるのは、法律で決まった休み(法定休日)に働いたときだけ。この休みは、週に1日あればいいことになっています。日曜がそうなら、土曜は会社が決めた休み。土曜のぶんは、週40時間をこえたところから25%です。ただし、法定休日を就業規則で決めていない会社では、土日とも出た週は土曜が法定休日になることも。就業規則で確かめましょう。
03月給24万円、残業20時間なら、いくら?
ひとことで時給×1.25×時間。この例なら37,500円。
電卓を出して、やってみましょう。むずかしく見えますが、やるのは割り算とかけ算だけ。月給の人は、まず時給になおします。こんな人で出してみた、ひとつの例です。
- 月給24万円(基本給と職務手当)
- ほかに通勤手当が1万円
- 定時は1日8時間。1年の休みは125日
- 残業は20時間(どれも22時まで)
4つのステップで出せる
使う月給を決める
この24万円を、そのまま使います。通勤手当(実際の通勤費に応じたもの)は入れません。
1か月にふだん働く時間を出す
月によって日数がちがうので、1年でならします。(365日−125日)×8時間÷12か月=160時間。
時給にする
24万円÷160時間=1,500円。これが、もとになる時給です。
割増率と時間をかける
1,500円×1.25×20時間=37,500円。これが、この例の残業代です。
1,500円
もとになる時給
1,875円
残業1時間ぶん
37,500円
残業20時間ぶん
22時をこえた時間は1.5倍なので、1時間2,250円になります。思ったより多い? 少ない? あなたの明細とも比べてみてください。
時給を出すとき、入れない手当があります。法律で決まっているのは、次の7つだけ。
- 家族・通勤・住宅の手当
- 別居・子女教育の手当
- 結婚祝いのような、臨時のお金
- ボーナスなど、1か月をこえる期間ごとに払うお金
ポイント
手当は、名前より中身
名前が「住宅手当」でも、家賃と関係なく、みんな同じ額なら入れます。家族や通勤の手当も同じ。ほかの手当(役職手当など)は、入れる決まりです。
フレックスタイム制や裁量労働制など、働く時間のしくみがちがうと、数え方も変わります。くわしくは、会社のルールで確かめてください。
04「みなし残業」って、なに?
ひとことで決まった時間ぶんの残業代を、先に払うしくみ。こえたぶんは別に払われる。
ことば固定残業代
毎月、決まった額で先に払われる残業代のこと。「みなし残業」などとも呼ばれます。名前がちがっても、国のルールでは同じものとして見ます。
たとえば「20時間ぶん」なら、残業が10時間の月でも、20時間ぶんが払われます。20時間をこえたら、そのぶんは別。たとえば03の例の人が、「20時間ぶん」の固定残業代をもらっていたとします。25時間残業したら、こえた5時間ぶんの9,375円が上乗せされます。
求人票などには、次の3つを書くよう、国のルール(指針)で決まっています。
- 固定残業代をのぞいた基本給
- 何時間ぶんで、いくらか
- こえたぶんは追加で払うこと
求人票を見るときは、この3つがそろっているかを、まず見てみてください。
入社したあとも、何時間ぶんかは会社のルールにはっきり書くもの、と監督署は説明しています。わからなければ、人事に聞いてかまいません。
求人を見比べるときは
みなし残業あり
いいところ
- 残業が少ない月も、決まった額がもらえる
- 早く帰っても、この額は減らない
気をつけること
- 基本給がいくらかを、分けて見ておく
- こえたぶんが払われているか、自分でも数えたい
みなし残業なし
いいところ
- 働いたぶんだけ、毎月きちんと出る
気をつけること
- 残業が少ない月は、そのぶん給料も少ない
どちらでも、働いたぶんに見合う残業代がもらえるのは同じです。
気をつけて
こえたぶんが払われていない例も
国が指導した例には、20時間ぶんの固定残業代だけで、こえたぶんを払っていなかったところもあります(2025年)。働いた時間は、自分でもメモしておきましょう。
05管理職になったら、残業代は出ない?
ひとことで肩書きでは決まらない。当たらなければ、残業代は出る。
法律には、働く時間や休みのルールの外にいる「管理監督者」という人がいます。この人たちには、残業と休日の割増がつきません。ただ、「管理職」ならみんな当てはまる、というわけではありません。
ことば管理監督者
会社の経営に深くかかわる人。当たるかどうかは、肩書きではなく、仕事の中身や権限、働き方などで決まります。
つまり、「課長」などの肩書きがあるだけでは、当てはまりません。自分で決められることが少なく、上司の指示を伝えるだけの人。来る時間や帰る時間を、きっちり管理されている人。こうした人は当てはまらないと、国のパンフレットに書かれています。
当たらなければ、ほかの人と同じように残業代が出ます。迷ったら、07の窓口で聞いてみてください。
06あなたの残業代、合ってる? チェックしてみよう
ひとことで明細とメモを並べて見る。メモがいちばんの手がかり。
残業代が合っているかは、明細だけではわかりません。メモと並べてみて、はじめてずれに気づけます。明細の見方は、給与明細の記事で。
今月の明細で、確かめられたものをタップ
当てはまったのは 0 / 6個
会社にも、毎日の働きはじめと終わりの時刻を確かめて、記録する決まりがあります(国のガイドライン)。それでも、自分のメモがあると、あとで「合わないかも」と思ったときの手がかりになります。
- 出社・退社の時刻と、休憩(スマホのメモで十分)
- その日にしたこと(「会議の資料」くらいでOK)
- 残業を頼まれたメールやチャット
- 給与明細と、入社のときの労働条件通知書
きっちりでなくてOK。思い出せる日だけでも、ないよりずっと役に立ちます。
07合わないときは、どうすればいい?
ひとことでまず会社に聞く。進まなければ、無料の窓口へ。
あわてなくて大丈夫。この順番で進めれば、ひとりで抱えこまずにすみます。
メモと明細をそろえる
いつ、何時間働いて、いくら払われたか。月ごとに並べておきます。
人事や総務に聞く
計算のまちがいなら、次の給料で直ることもあります。メールなど、文字で残る形で聞くのがおすすめです。
無料の窓口で相談する
国の「総合労働相談コーナー」は、全国の監督署の中などにあって、予約はいりません。電話でも話せます。法律に反していそうなら、指導できるところにつないでくれます。
監督署に、指導を求める
監督署は、会社を調べて、直すよう指導する国の役所です。メモや明細を持っていくと、話が伝わりやすくなります。
平日の昼が無理なら、「労働条件相談ほっとライン」(0120-811-610)へ。国の事業で、2026年度は平日17〜22時、土日祝9〜21時。無料で、名前を言わずに相談できます。ただし、ここから指導はしません。ひとりで行くのが不安なら、まずは電話で聞いてみるだけでもいいんです。
22,605件
監督署が扱った、給料や残業代の不払い(2025年)
96.1%
そのうち、指導で払われたもの(一部払いを含む)
2025年に、指導で払ってもらえた人は16万人をこえます(一部だけ払われた例も含みます)。ひとりで悩まず、窓口を頼ってください。
気をつけて
さかのぼれるのは、3年ぶんまで
残業代を含む給料は、給料日から3年たつと請求できなくなります(2020年4月から後の給料日のぶん)。法律では5年ですが、当分のあいだは3年です。古い月のぶんから消えていくので、気づいたら早めに動きましょう。
08よくある質問
Q残業代は、1分単位でつくの?
A毎日の残業は、1分単位で数えるのが原則。15分や30分に足りないぶんを毎日切り捨てるのは、認められていません。1か月の合計なら、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間にしてもかまいません。2025年には、15分を一律に切り捨てていた会社が、指導で差額を払った例もあります。
Q着替えや研修も、働いた時間に入る?
A会社に言われて、職場で制服に着替えたり、準備や片づけをしたりする時間は、働いた時間です。出るように決められた研修も同じ。国のガイドラインに、そう書かれています。
Q「残業は月20時間までしかつけないで」と言われたら?
A働いた時間は、ありのまま書いておいてください。残業の申告に上限を決めて、それをこえる申告を認めない。そうしたことはしてはいけないと、国のガイドラインに書かれています。言われたこともメモして、07の窓口へ。
Q相談したことで、不利にならない?
A監督署に違反を申告したことを理由に、会社が辞めさせたり、不利に扱ったりするのは、法律で禁止されています。労働局に助言やあっせんを求めたことを理由にした不利な扱いも、禁止です。窓口も、相談した人のプライバシーに気をつけています。
今日の最初の一歩
今月の明細で、残業代を時間で割ってみる
出た数字が、残業1時間あたりの額です。03のやり方で出した時給に、1.25をかけた数字と比べてみてください。同じくらいか多ければOK。大きく少なければ、明細を持って人事に聞いてみましょう。5分で終わります。
2026.10.03 公開 文・WE POP編集部
参考にした情報
- e-Gov法令検索「労働基準法」(第32条・第35条・第36条・第37条・第41条・第104条・第109条・第115条・附則第143条)
- e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」(第19条・第20条・第21条)
- e-Gov法令検索「労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令」
- 厚生労働省 確かめよう労働条件「時間外・休日労働と割増賃金」
- 厚生労働省 確かめよう労働条件「週休2日制ですが、土日の手当に差があります。問題はない?」
- 厚生労働省 確かめよう労働条件「残業、早出や休日出勤による割増賃金のチェック方法を教えてください。」
- 厚生労働省「時間外労働の上限規制」(働き方改革特設サイト)
- 厚生労働省 リーフレット「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」(2023年4月1日から)
- 大阪労働局「労働基準関係法令のあらまし」(令和8年3月版)
- 川崎北労働基準監督署「割増賃金の計算方法」
- 大阪労働局「よくあるご質問(時間外労働・休日労働・深夜労働)」(端数処理)
- 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク リーフレット「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」
- 厚生労働省「職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者…等がその責務等に関して適切に対処するための指針」(第三 労働条件等の明示)
- 厚生労働省 スタートアップ労働条件「固定残業代を支払うこととすれば、残業や休日勤務をさせても別途に残業代を支払わなくてよいでしょうか?」
- 厚生労働省 確かめよう労働条件「基本給に含めた割増賃金って何?」
- 厚生労働省 パンフレット「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」
- 厚生労働省 リーフレット「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の主なポイント
- 厚生労働省 リーフレット「未払賃金が請求できる期間などが延長されています」
- 厚生労働省 確かめよう労働条件「賃金請求権の消滅時効は、どのように変更されたのでしょうか?」
- 厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和7年)」
- 厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和7年)」別紙(是正事例)
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報」(2026年2月25日公表)
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
- 厚生労働省 確かめよう労働条件「労働条件相談ほっとライン」
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