目次
入社のときにもらった、雇用契約書や労働条件通知書。サインして、そのまま引き出しの奥に入れていませんか。この紙が役に立つのは、むしろ働きはじめてから。給料や残業、異動で「あれ?」と思ったとき、まず開くのがこの紙です。読み終わるころには、手元の紙のどこを見ればいいかがわかります。
この記事でわかること
- 契約書と通知書は、何がちがうのか
- 書いてないといけないことと、手元の紙での探し方
- 「変更の範囲」や「就業規則による」の読み方
- 紙をもらっていない・なくしたときに、どうするか
先に結論
- 会社には、働く条件を紙で渡す決まりがある。紙の名前より、中身がそろっているかを見る
- 紙にないことは就業規則に書いてあることが多い。会社は、いつでも見られるようにしておく決まり
- もらっていないなら、まず会社にメールで頼む。だめなら国の無料の窓口へ
01「通知書」と「契約書」、何がちがう?
ひとことで通知書は会社が渡す紙。契約書は2人でサインする紙。
名前が似ていて、まぎらわしいですよね。ちがいは「誰が出すか」と「法律で決まっているか」です。
2つの紙のちがい
労働条件通知書渡す決まりあり
いいところ
- 給料・時間・場所など、働く条件を会社が書いて渡す
- 労働基準法15条で、渡すことが決まっている
- あなたのサインはなくてもよい
気をつけること
- 会社からの「お知らせ」の形
- 渡さないと、罰金の対象になる(会社も)
雇用契約書
いいところ
- 「この条件で働きます」と、あなたと会社の両方がサインする
- お互いに、同じ条件でOKしたことが残る
気をつけること
- つくるかどうかは、法律では決まっていない
- 書くべきことが、そろっていないこともある
1枚の紙で、両方の役目をしていることもあります。
働く約束(労働契約)は、2人がOKすれば成り立ちます。紙がなくても、約束はあるということ。だから労働契約法という法律には、中身をできる限り書面で確かめる、と書かれています。
法律が決めているのは、中身と渡し方です。紙の名前は決まっていません。「雇入通知書」や、契約書と1枚にした紙でもかまいません。名前より、決まったことが書いてあるかを見てください。
02書いてないといけないのは、どの項目?
ひとことで労働基準法で、書面で必ず渡すのは6つ。手元の紙で、欄の名前を探してみる。
会社が伝える条件は、全部で14あります(制度があるときだけのものも入れて)。そのうち6つは、口で言うだけではダメ。紙で渡す決まりです(賃金のうち昇給だけは、口でもよい)。この決まりは、会社に雇われて働く人のもの。業務委託のフリーランスは、別のルールになります。
パートや契約社員の人は、紙でもらえることがほかにもあります(06で説明します)。派遣で働く人も、労働者派遣法で、ほかに書面で伝えることが決まっています。
6項目
労働基準法で紙で渡すと決まっていること
30万円以下
条件を伝えなかったときの罰金
紙の中では、決まった欄の名前で書かれていることが多いです。国のひな形(モデル)にある欄の名前で、7つに分けて並べました。手元の紙で探してみてください。
手元の紙で見つかったらタップ
当てはまったのは 0 / 7個
ことば雇入れ直後と、変更の範囲
「雇入れ直後」は、入ってすぐの場所や仕事のこと。「変更の範囲」は、この契約のあいだに、異動や転勤で変わるかもしれない範囲のことです。
給料の欄は、毎月の給与明細と見比べてみてください。基本給や手当の額が、紙と同じかを見ます。明細の読み方は給与明細の記事にまとめています。
03「変更の範囲」がない。これって違反?
ひとことで2024年3月までに結んだ、期間の決まりのない契約なら、なくても違反ではない。
2024年4月1日から、働く場所と仕事の「変更の範囲」も書くことになりました。でも、あなたの紙にはその欄がないかもしれません。
国のQ&Aでは、このルールは2024年4月1日以降に結ぶ契約からです。すでに働いている人に、会社が書き直して渡す必要はありません。ただ、もう一度伝えるのは「望ましい」とも書かれています。なお、1日ごとに雇われる日雇いの人は、その日の場所と仕事が書いてあれば足ります。
気をつけて
契約社員・パートの人は、更新のたびにチェック
期間の決まった契約は、更新するたびに、新しく契約を結ぶ扱いです。なので、2024年4月1日以降に更新したなら、そのときの紙に「変更の範囲」があるはずです。なければ、会社に聞いてみてください。
「会社の定める事業所」「会社内でのすべての業務」のように書いてあったら、範囲をしぼっていない、と読めます。この範囲は、05で話す異動や転勤にも関わります。転職先の紙の見方は、内定を承諾する前の記事でくわしく書きました。
04「就業規則による」と書いてあったら?
ひとことで無理のない中身で、みんなに知らされていれば、就業規則も契約のうち。
ことば就業規則
会社で働く人みんなに使われる、働き方のルールブック。休みの日、給料の決め方、辞めるときの決まりなどが書いてあります。いつも10人以上が働く職場(支店や工場ごとに数えます)は、つくって国(労働基準監督署)に届ける決まりです。
時間・休み・辞めるときの決まりは、書くことが多くなりがちです。そんなときは、通知書に「くわしくは就業規則第〇条」と書くこともできます。国のひな形にも、そう書く欄があります。つまり、通知書だけでは条件の半分しか見えていないこともあるんです。
メモ
条文の番号だけでいいのは、こんなとき
国のひな形の説明では、書くことが多すぎる場合です。そのときも、勤務の種類ごとの考え方を書き、関係する条文をもれなく並べます。ただし、残業があるかどうかは番号だけでは足りません。休みは曜日か日、賃金は額か等級を書くのが基本です。就業規則そのものを渡し、どこが自分に当てはまるかを示した場合は別です。
そして会社には、このルールブックを、働く人に知らせる決まりがあります。やり方は3つです。
- 職場の見やすいところに、貼るか置いておく
- 紙で一人ひとりに渡す
- パソコンなどで、いつでも見られるようにする
どこにあるかわからなければ、人事や上司に「就業規則は、どこで見られますか」と聞いてOKです。聞くのは、ふつうのことです。
労働契約法では、入社のときにこうして知らされていて、中身に無理がなければ、ルールブックの決まりがそのまま契約になります。だから、見られる状態にあるかが大事なんです。
ポイント
契約書と就業規則がちがったら
労働契約法では、ルールブックより悪い条件の契約は、その部分が無効です。かわりに、ルールブックの条件になります。たとえば、ルールブックより休みの日が少ない契約なら、ルールブックの日数になる、ということです。反対に、あなたと会社が、ルールブックより良い条件で個別に約束していたら、その約束のほうが使われます。
05条件が変わるとき、会社が勝手に決められる?
ひとことで給料などの条件は、合意が基本。異動や転勤は「変更の範囲」の中なら命じられる。
働いているうちに「来月から手当がなくなる」「勤務時間が変わる」と言われることがあります。労働契約法では、条件を変えるのはあなたと会社がOKしたときが基本です。
会社がルールブックを書きかえて、働く人に不利な条件にすることもあります。これは、あなたがOKしなければ、原則できません。例外は、変え方に無理がなく、新しいルールを知らせたときです。無理がないかは、どれだけ不利になるか、変える必要があるか、などから見られます。
メモ
異動や転勤は、話が別
紙の「変更の範囲」の中なら、会社は異動や転勤を命じられるのが基本です。ルールブックに、異動を命じることがあると書かれていて、場所や仕事をしぼる約束がないときです。それでも、仕事の必要がないのに命じたり、ほかの目的で命じたりすると、行き過ぎとして無効になりえます。生活への不利益が大きすぎる場合も同じ。裁判で示されてきた考え方です。
気をつけて
「同意書」は、その場でサインしなくていい
給料や手当が減る話で、同意書へのサインを頼まれることがあります。サインすると、OKしたと見られやすくなります。おすすめは、「持ち帰って読んでから、お返事します」と伝えること。変わる前と後を紙でもらい、比べてから決めてください。
もうひとつ。最初に伝えられた条件が、本当とちがっていたとします。そのとき労働基準法では、働く人はすぐに契約をやめられると決まっています。辞めると決めたときの伝え方は、退職の伝え方の記事にまとめました。
06契約社員・パートなら、いつ何を見る?
ひとことで更新のたびに新しい書面が出る。上限と無期転換を見る。
期間の決まった契約は、更新のたびに紙が出ます。見るところは、時期によって少しずつちがいます。また、パートや契約社員には、書面で渡すものが6つのほかにもあります。昇給・退職金・ボーナスがあるかどうかと、相談窓口です。2026年10月1日からは、伝えることがもう1つ加わりました。「正社員との待遇のちがいについて、説明を求めることができる」ということです。これらを書面で伝えない会社は、10万円以下の過料(刑罰ではない、お金のペナルティ)の対象になります。
期間の決まった契約で、紙に出てくること
- 入社
更新のルールを見る
更新があるか、何で決めるか(仕事の量や成績など)が書かれます。
- 更新のたび
更新の上限を見る
「更新は〇回まで」「通算〇年まで」という上限があれば、書く決まりです。あとから上限をつくったり、短くしたりするときは、会社は先に理由を話します。
- 通算5年をこえる更新
無期転換の案内を見る
同じ会社で、契約が通算5年をこえるとします。そうなると、申し込めば期間の決まりのない契約に変われます。これを無期転換と呼びます。この権利が出る更新のたびに、申し込めることと、変わったあとの条件が書かれます。ただし、契約のあいだが長くあいた場合や、定年後の再雇用などには例外があります。
- 申し込んだあと
今の契約が終わった次の日から、無期に
会社は、申し込みを断れません。申し込みは、今の契約が終わる日までにします。
07もらっていない・なくしたときは、どうする?
ひとことでまず会社に頼む。だめなら、無料の国の窓口へ。
「そもそも紙をもらっていない」という人もいるかもしれません。国の監督で見ても、条件の伝え方(渡していない・項目が足りないなど)で違反があった職場は、少なくありません。ただ、監督に入った職場の中での数で、全部の会社の割合ではありません。
19,049か所
出典:厚生労働省「令和7年 監督業務実施状況(速報値)」第1表(労働基準法32条・37条・15条・39条)
紙がないなら、次の順番で進めてみてください。なくした場合も同じです。
紙を手に入れるまで
メールや社内のシステムを探す
「労働条件通知書」「雇用契約」で検索してみてください。PDFで渡している会社もあります。
人事にメールで頼む
例:「入社のときの労働条件通知書を、もう一度いただけますか。手元で見つからなくなってしまいました」。責める言い方はいりません。メールなら、頼んだ記録も残ります。
給与明細や求人票を集めておく
紙が出てこなくても、条件の手がかりになります。入社のときのメールや、面接のメモも残しておきます。
返事がなければ、国の窓口に話す
労働局や労働基準監督署の中にある「総合労働相談コーナー」に相談できます。お金はかからず、予約もいりません。相談員がいない時間もあるので、行く前に電話しておくと確実です。
メモ
相談は、電話でもできる
総合労働相談コーナーは、会って話すほか、電話でも相談できます。プライバシーに配慮して話を聞く、と国のページに書かれています。法律違反の疑いがあれば、労働基準監督署の担当に話をつないでくれます。土日・祝日と、年末年始(12月29日〜1月3日)はお休みです。
08よくある質問
Q雇用契約書はもらったけど、通知書はもらっていません
A労働基準法の上では、契約書に、紙で渡す6つのことがそろっていれば足ります。名前は問われません。パートや契約社員なら、06で書いた昇給・退職金・ボーナスがあるか、相談窓口なども、紙に要ります。無期転換を申し込める更新のときは、その案内と、変わったあとの条件も入ります。02のチェックで、欄を見てみてください。
QメールやPDFで受け取ったけど、それでいい?
Aあなたが希望したなら、メールやSNSでもかまいません。ただし、印刷して紙にできる形にかぎります。消える前に、PDFを保存しておきましょう。
Q異動のときに、新しい紙はもらえる?
A労働基準法の紙のルールは、契約を結ぶときのものです。なので、異動のたびに渡す決まりはありません。ただ、労働契約法には「できる限り書面で確かめる」とあります。大事な変更なら、メールでいいので残してもらうよう頼んでみてください。
Q紙の条件と、実際の働き方がちがいます
Aまずは、どこがちがうかを書き出して、上司か人事に聞いてみてください。残業代のちがいなら、自分でも一度計算してみましょう。それでも直らないなら、総合労働相談コーナーへ。紙とメモを持っていくと、話が早いです。
今日の最初の一歩
会社のメールで「労働条件」と検索して、書面を保存する
見つかったら、スマホにPDFを保存するか、写真を撮っておきましょう。見つからなければ、人事に「もう一度いただけますか」と1通送るだけでOKです。
2026.10.06 公開 文・WE POP編集部
参考にした情報
- e-Gov法令検索「労働基準法」(15条 労働条件の明示、89条 就業規則の作成及び届出、106条 法令等の周知、120条 罰則)
- e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」(5条 明示する労働条件と方法〈5項・6項 無期転換の明示〉、52条の2 周知の方法)
- e-Gov法令検索「労働契約法」(4条 内容の理解の促進、6条 成立、7条・12条 就業規則との関係、8〜10条 変更、18条 無期転換)
- 厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」
- 厚生労働省 リーフレット「2024年4月から労働条件明示のルールが変わりました」(2024年9月)
- 厚生労働省「令和5年改正労働基準法施行規則等に係る労働条件明示等に関するQ&A」(2-2 日雇いの変更の範囲)
- 厚生労働省「モデル労働条件通知書(一般労働者用;常用、有期雇用型)」と記載要領(2026年10月施行の改正後)
- 厚生労働省 確かめよう労働条件「裁判例:配置転換」
- 厚生労働省 確かめよう労働条件「労働条件の明示」
- 鳥取労働局「労働条件通知書」
- 厚生労働省「労働基準監督年報」(令和7年 監督業務実施状況〈速報値〉を掲載)
- 厚生労働省「令和7年 監督業務実施状況(速報値)」
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
- e-Gov法令検索「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(6条 文書の交付、14条2項 待遇のちがいの説明、31条 過料)
- e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(31条の2 待遇に関する事項等の説明・明示)
- 厚生労働省・都道府県労働局 リーフレット「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります(令和8年10月1日施行)」
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