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「内定です。お返事は今週中にお願いします」。うれしい連絡ですよね。すぐにでも「お受けします」と言いたくなります。でも、その前に10分だけ時間をください。入ってから「聞いていた話とちがう」とならないように、紙で確かめておくことがあります。読み終わるころには、どこを見て、何を聞けばいいかがわかります。
この記事でわかること
- 内定を承諾すると、何を約束したことになるのか
- 労働条件通知書の、どこを見ればいいか
- 2024年4月から増えた「変更の範囲」の読み方
- 面接で聞いた話を、口約束で終わらせない頼み方
先に結論
- 内定をOKすると、働く約束(労働契約)が成り立つことが多い。だから返事の前に条件を見る
- 会社は、給料・時間・場所・仕事などを書面で渡す決まりがある。返事の前に見せてほしいと頼んでいい
- 2024年4月から、将来の転勤や異動の範囲も書くことになった。ここは必ず読む
01内定を承諾するって、何を約束すること?
ひとことで「この条件で働きます」という約束が、そこで成り立つことが多い。
内定の承諾は、ただの返事ではありません。新卒向けの国の資料では、内定を受けた時点で労働契約(働く約束)が成り立つとした裁判の判断が紹介されています。ただし、内定の形は会社ごとにちがい、どれも同じとは言えない、とも書かれています。転職の内定でも、承諾で約束が成り立つことが多いと考えて動くのが安全です。
ことば労働契約
「働きます」「給料を払います」と、働く人と会社が約束すること。法律上は、口だけの約束でも成り立ちます。だからこそ、中身を紙で確かめておくことが大切です。
つまり、承諾したあとに「やっぱり給料はこの額で」と言われても、もめやすくなります。条件を見るのは、返事の前。これがいちばんのポイントです。
ポイント
返事を少し待ってもらうのはOK
「条件の書面を読んでから、お返事させてください」と伝えるのは、失礼ではありません。期限が短いときは「〇日までにお返事します」と、自分から日にちを出すと、話が進みやすいです。
02「労働条件通知書」って、どんな紙?
ひとことで給料・時間・場所などを、会社が書いてくれる紙のこと。
労働基準法という法律で、会社は働く約束をするときに、どんな条件で働くかを伝えることになっています。そのうち特に大事なものは、口で言うだけではダメ。書面で渡す決まりです。この書面を「労働条件通知書」と呼びます。
14項目
会社が伝える条件の項目(制度がある場合を含む)
6項目
そのうち、書面で渡すと決まっているもの
書面で渡すと決まっているのは、次の6つです。正社員として入るなら、昇給(給料が上がるしくみ)だけは、口で伝えるだけでもよいことになっています。パートや契約社員の場合は、このあと説明します。
- 契約の期間(いつまでの契約か、期限がないか)
- 更新のルール(期間の定めがある契約のとき)
- 働く場所と仕事の内容(2024年4月から「変更の範囲」も)
- 何時から何時まで働くか、残業があるか、休憩・休みの日・休暇
- 給料の決め方・計算のしかた・払い方、締め日と支払日
- 辞めるときのルール(解雇の理由も含む)
紙の名前は「雇用契約書」や「内定通知書」のこともあります。名前より、この6つが書いてあるかを見てください。メールやPDFで受け取ることもできます。ただし、それはあなたが希望した場合だけで、印刷して紙にできる形にかぎります。
メモ
パート・契約社員で入る人へ
パートや、期間の決まった契約で入る人には、書面で渡すものがさらにあります。昇給・退職金・ボーナスがあるかどうかと、相談窓口です。正社員なら口でもよい昇給も、こちらは書面です。2026年10月1日からは、もう1つ加わりました。「正社員との待遇のちがいの中身や理由などについて、説明を求めることができる」ということです。契約を更新するときも同じです。気になったら、会社に説明を求めてみてください。
03通知書を開いたら、どこから見る?
ひとことでお金・時間・場所。この3つを、聞いた話と並べて見る。
書面を開いたら、求人票や面接のメモを横に置いてください。そのうえで、下のものを1つずつ見ていきます。
書いてあって、聞いた話と同じならタップ
当てはまったのは 0 / 8個
気をつけて
固定残業代は、何時間分でいくらかを見る
「月給25万円(固定残業代を含む)」のような書き方だと、基本給がいくらかわかりません。求人のルールでは、手当がいくらで何時間分か、それを超えたら別に払うことを書くことになっています。計算のしかたは残業代の記事で書いています。
試用期間(お試しの期間)の給料が低いのは、それだけなら違反ではありません。ただ、求人のルールでは、その場合は試用期間のあいだと、そのあとの条件を、それぞれ書くことになっています。どちらの額も、原則として最低賃金より低くてはいけません。最低賃金は、地域(都道府県)ごとに決まる給料の下限です。
042024年4月から増えた「変更の範囲」って?
ひとことで将来、どこまで転勤や異動がありうるか。そこが書かれるようになった。
2024年4月1日から、働く場所と仕事の中身について、「変更の範囲」も書くことになりました。正社員だけでなく、契約社員・パート・派遣の人も入ります。日雇い(1日ごとに雇われる働き方)の人を除いて、働く人みんなが対象です。
ことば変更の範囲
その契約の間に、転勤や異動で変わるかもしれない場所や仕事の範囲のこと。出張や研修のような、少しのあいだだけの変更は含みません。入ってすぐのことだけでなく、この先の見込みまで書きます。
書き方は会社によってちがいます。国のパンフレットにある例を、2つに分けて並べてみます。
「変更の範囲」は、こんなふうに書かれる
しぼってある書き方
いいところ
- 「変更なし」「愛知県内」など、範囲がはっきりしている
- 引っこしがあるか、先に見通せる
- 仕事も「〇〇業務」と書いてあれば、どんな仕事をするかの見通しが立てやすい(WE POPの考え)
気をつけること
- 希望しても、範囲の外には動きにくいことがある
広く書いてある書き方
いいところ
- いろいろな場所や仕事を経験できる
- キャリアの幅が広がることもある
気をつけること
- 「会社の定める営業所」「会社内でのすべての業務」は、限定がないという意味
- 全国転勤や、まったくちがう部署への異動もありうる
どちらがよい・悪いではありません。自分の暮らしと合うかで見てください。
気をつけて
「会社の定める〜」と書いてあったら、聞いてみる
面接で「転勤はほぼない」と聞いていても、書面には「会社の定める事業所」とだけ書かれていることがあります。事業所は、支店や営業所のことです。口で聞いた話より、書いてあることのほうが、あとで確かめやすいもの。気になるなら、承諾の前に「範囲を書いてもらえますか」と頼んでみてください。はじめからテレワークで働くことが想定されているなら、自宅なども就業場所として書かれます。
05面接で聞いた話、書面にしてもらえる?
ひとことで頼んでいい。法律も「できる限り書面で確かめる」としている。
「残業は月10時間くらい」「1年目で異動はない」。面接で聞いたこういう話は、紙には書かれていないことがよくあります。労働契約法という法律には、働く人と会社は契約の中身をできる限り書面で確かめる、と書かれています。頼むのは、わがままではありません。
口約束を、紙に残すまで
聞いた話をメモに書き出す
面接で言われたことのうち、自分にとって大事なものを3つまでにしぼります。いつ、誰が言ったかも書いておきます。
通知書に書いてあるか見比べる
書いてあれば、それでOK。書いていないもの、ちがうものに印をつけます。
メールで、やわらかく聞く
例:「面接で、配属は〇〇部と伺いました。念のため、書面に書いていただけますか」。電話で聞いたときも、あとでメールに残しておくと安心です。
返ってきた答えを保存する
通知書も、やりとりのメールも、働きはじめてからもずっと残しておきます。あとで「言った・言わない」になったときの材料になります。
メモ
求人票とちがう条件が出てきたら
求人票や面接で出した条件を変えるとき、会社は、どこを変えたかを伝えることになっています(職業安定法)。いちばんいいのは、前とあとを並べて見比べられる書面です。「基本給30万円」が「28万円」になったら、理由を聞いてかまいません。聞かれたら、会社は説明することになっています。
06求人票から入社まで、どこで何をもらう?
ひとことで書面は何回か出てくる。いちばん大事なのは、最後の通知書。
- 求人票
まず条件が示される
どんな仕事か、どこで、何時から、いくらかなどが書かれます。2024年4月からは、ここにも「変更の範囲」が入るようになりました。
- 面接
条件が変わるなら伝えられる
給料に幅があった場合なども、決まった額を伝えることになっています。聞いた話はメモに残します。
- 内定
労働条件通知書を受け取る
働く約束をするときに、会社が書面で渡します。届いていなければ「書面をいただけますか」と聞いて大丈夫です。
- 承諾
書面を読んでから返事をする
見比べて、気になるところは先に聞きます。答えに納得できたら、OKの返事をします。
- 入社
書面はずっと残しておく
通知書は、給料や異動のことで迷ったときの手がかりになります。スマホで写真を撮っておくと、なくしても困りません。
今の会社で働きながら転職するなら、承諾してから退職を伝える順番がおすすめです。辞めるまでにやることは、会社を辞める前の記事にまとめています。
07承諾したあとで「話がちがう」となったら?
ひとことで書面とちがえば、すぐ辞められるルールがある。迷ったら国の窓口へ。
働きはじめてから、書面の条件と実際がちがっていたとしますね。そのときは、約束どおりにしてほしいと会社に言えます。さらに労働基準法では、伝えられた条件が本当とちがえば、すぐに契約をやめられると決まっています。
14日
入社前に、ほかの会社に決めたくなることもありますよね。民法627条では、期間の決まっていない雇用は、やめると申し入れた日から2週間で終わります。京都の新卒応援ハローワークのページは、この条文に準じて説明しています。承諾書を出したあとでも、2週間以上前に辞退を申し入れるのは法的に問題はないと考えられる、という内容です。つまり、伝えるのは入社日の2週間以上前が目安です。
契約社員のように期間の決まった契約は、別のルール(民法628条)になり、同じようには言えません。迷ったら、下の相談窓口に聞いてみてください。どちらの場合も、決めたらできるだけ早く、誠実に連絡しましょう。
気をつけて
ひとりで悩まず、無料の窓口へ
「条件を勝手に変えられた」「ほかの会社を断るよう、強く言われた」。そんなときは、国の「総合労働相談コーナー」に話してみてください。全国の労働局や労働基準監督署の中にあります。お金はかからず、予約もいりません。学生なら、学校の窓口や新卒応援ハローワークも使えます。
08よくある質問
Q通知書をまだもらっていないのに、承諾の期限がきてしまいます
A「条件の書面を読んでから、お返事したいです」と伝えて、書面を先にもらえるか聞いてみてください。期限を数日のばしてもらえることもあります。書面を出してくれない会社かどうかも、ひとつの判断材料になります。
Q「変更の範囲」が書いていない通知書をもらいました
A2024年4月1日以降に結ぶ契約なら、書くことになっています。「場所と仕事の、変更の範囲を書いていただけますか」と聞いてみてください。期間の決まった契約は、更新も新しい契約として扱われます。なので、2024年4月1日以降に更新したときにも書かれます。書かなくてよいのは、それより前に結んで、そのあと更新していない契約です。
Q給料の交渉をしたら、内定を取り消されませんか?
A内定で労働契約が成り立っていれば、取り消すのは解雇と同じ扱いです。きちんとした理由がなければ無効になります(労働契約法16条)。ただ、承諾の返事をする前に契約が成り立っているかは、場合によってちがいます。無効だとしても、争うには時間も手間もかかります。交渉するなら、数字を挙げて、ていねいに相談するのがおすすめです。
Q内定承諾書にサインしたら、もう辞退できない?
A期間の決まっていない雇用なら、入社日の2週間以上前に伝えれば、法的に問題はないと考えられます。ハローワークのページも、民法627条に準じてそう説明しています。契約社員の内定は別のルールなので、迷ったら相談窓口へ。ただ、会社はあなたのために準備を進めています。決めたらすぐに、まずは電話で伝えるのがおすすめです。
今日の最初の一歩
内定のメールを開いて、「就業の場所」の欄を探す
通知書が届いていたら、場所と仕事の「変更の範囲」に何と書いてあるかを見てみてください。まだ届いていなければ、「条件の書面をいただけますか」と1通メールを送るだけでOKです。
2026.10.04 公開/2026.10.05 更新 文・WE POP編集部
参考にした情報
- e-Gov法令検索「労働基準法」(15条 労働条件の明示)
- e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」(5条 明示する労働条件と方法)
- e-Gov法令検索「労働契約法」(4条 労働契約の内容の理解の促進、6条 労働契約の成立、16条 解雇)
- e-Gov法令検索「民法」(627条 期間の定めのない雇用の解約の申入れ、628条 やむを得ない事由による雇用の解除)
- e-Gov法令検索「職業安定法」(5条の3 労働条件等の明示)
- e-Gov法令検索「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(6条 文書の交付、14条 待遇の相違の説明)
- e-Gov法令検索「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則」(2条 明示する事項。2026年10月1日施行の改正後)
- 厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」
- 厚生労働省 リーフレット「2024年4月から労働条件明示のルールが変わりました」(2024年9月)
- 厚生労働省 パンフレット「2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?」
- 厚生労働省「令和5年改正労働基準法施行規則等に係る労働条件明示等に関するQ&A」
- 厚生労働省「モデル労働条件通知書(一般労働者用;常用、有期雇用型)」(2026年10月施行の改正後)
- 厚生労働省・都道府県労働局「労働者を募集する企業の皆様へ(職業安定法の改正等)」
- 厚生労働省 確かめよう労働条件「就職前に知りたい!労働法のこと」
- 京都新卒応援ハローワーク「内定後のこと」(更新日の記載なし。2026年10月閲覧)
- 厚生労働省・都道府県労働局 リーフレット「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります(令和8年10月1日施行)」
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
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