この記事にはプロモーションを含みます。登場するチヒロさんやリナさんたちは、WE POPが作った架空の人物です。数字と制度は、日本学生支援機構の調査と公式ページのものです。
行きたい、と打ちかけた指で、チヒロさんは「ごめん、今回パス」と送りました。
お母さんには言えないんだけど
昼のパス、ほんとは行きたかった
奨学金が引き落とされたら、残りが2万ちょっとで
奨学金の返済、みんなどうしてるんだろ
既読去年の10月の夜、チヒロさんがこのLINEを送った相手は、大学の同じ学科だったリナさんです。昼に旅行を言い出したのも、リナさんでした。リナさんも奨学金を返していて、1年前に同じことで悩んでいました。
チヒロさんは当時26歳で、物流会社の総務で働いていました。一人暮らしで、手取りは18万円ほどです。給料日は月末で、毎月27日には奨学金の1万3,000円が引き落とされます。
大学を出る春、チヒロさんは母に言いました。「奨学金は、私が自分で返すから」。母は「ごめんね、借りさせて」と小さく笑いました。それからずっと、チヒロさんの手帳の27日には「返す日」と書いてあります。
去年の10月27日、月曜日の昼休みのことでした。会社の机でおにぎりを開けたとき、銀行のアプリから引き落としの通知が来ました。残高は2万1,340円。給料日まで、あと4日あります。
同じとき、大学の友だち4人のグループLINEが鳴りました。「3月の3連休、台湾に行かない?」。ほかの2人は、すぐに「行く!」と返しています。チヒロさんは打ちかけた文字を消して、指先が冷たくなったまま、断りの返事を送りました。
春から、チヒロさんなりに削ってきました。昼はおにぎりを家から持っていき、動画の定額サービスも1つやめました。毎月27日の残高は、手帳の端にメモしてきました。4月は1万6,000円、10月は2万1,000円。削っても、27日に見る数字はほとんど変わりませんでした。
前の日の日曜には、母から電話がありました。「奨学金、大丈夫?」。チヒロさんは「大丈夫だって」と早口で答えて、別の話をして電話を切りました。
01奨学金の返済、みんなどうしてる?
月曜の夜のLINEには、5分後にリナさんから返事が来ました。
言ってくれてよかった。私も去年、同じだったよ
みんな、どうやって返してるの? きついの私だけかな
延滞しないで返してる人、450万人以上いるんだって
でも、その半分くらいは、返し方を変える制度を知らないらしいよ
延滞せずに返している人のうち、月々の返済額を減らせる「減額返還」の制度を知らないと答えた人51.1%約2人に1人
出典:日本学生支援機構「令和6年度 奨学金の返還者に関する属性調査結果」(延滞していない人1,898人の回答)。延滞せずに返している人は、令和6年度末で約457万人です。
返す額を、減らせるの?
月の額を減らして、長く返すしくみ。しばらく待ってもらう制度もあるよ
返し方そのものを変えたいなら、相談先は借りた先のJASSOだよ
メモ
返済そのものの相談は、日本学生支援機構(JASSO)へ
減額返還は、月々の返済額を減らして、返す期間をのばす制度です。返す総額は減りません。返還期限猶予は、返済をしばらく待ってもらう制度です。どちらも条件と審査があります(会社員の減額返還は、年収400万円以下が目安)。相談先は、JASSOの奨学金相談センター(0570-666-301)です。
でも私、返せてはいるんだよね。減らしたいわけじゃない
じゃあ、きついのは返済より、返したあとのほうかもね
毎月、返したあとにいくらまで使っていいか、わかってる?
わかんない。だから、誘いを全部断ってる
チヒロさんは、手帳の27日のメモを見返しました。並んでいるのは、どれも2万円前後の数字です。この数字のどこを見れば、旅行に行けるかどうかがわかるのか。チヒロさんには、それがわかりませんでした。
02返せているのに、相談していい?
リナさんとのLINEは、日付が変わっても続きました。
私は去年、お金の無料相談で、家計を見てもらったよ
奨学金を返してる途中なのに、お金の相談に行っていいの?
保険とか、すすめられそうでこわい
奨学金の残りも、そのまま見せたよ。それを引いてから計算してくれた
相談の相手は保険も扱う人だから、保険の話も出たよ
でも「今日は家計だけで」って言ったら、それで終わった
無料のお金の相談で何が聞けるか、すすめられたときの断り方は、無料のお金の相談、何が聞ける?の記事でくわしく書いています。
03いちばん少ない日の残高
寝る前に、チヒロさんはスマホのメモに、聞きたいことを3つ書きました。返済のほかに、毎月いくらまでなら使っていいのか。給料日が月末でも、27日をこわがらずにすむ形はあるか。3月の旅行に、今から間に合うか。いちばん下には、手帳の27日の残高も写しておきました。
書き終えてから、オンラインで受けられるお金の無料相談を、スマホから申し込みました。旅行の返事は、話を聞いてから決めることにしました。
11月15日の土曜日の午前、チヒロさんは画面の向こうの担当の人と、1か月のお金の流れを表にしました。手取りから家賃や奨学金、毎月の出費を全部引いても、1万円ほどは残っていました。ただ、その1万円は給料日のすぐあとに、なんとなく消えていました。
そのあとで、チヒロさんは聞かれました。「27日の残高は、ふだんどうやって見ていますか」。手帳のメモを読み上げると、担当の人は数字を少し追ってから、こう言いました。
担当の人は、給料日に楽しみの分を先に別の口座へ移す形を、案として出してくれました。保険の話も少し出ましたが、チヒロさんは「今日は家計だけで」と伝えました。帰りぎわ、チヒロさんは自分で決めました。旅行用に毎月1万円を分けて、足りない分は冬のボーナスから出します。減額返還は使わずに、今の額のまま返します。返せているうちは、自分で決めた額で返したかったからです。
あなたの場合相談の前に、自分のお金で聞きたいことを書いてみる
書いた内容は、この端末の中にだけ残ります。
043月27日、昼休みに
相談した日の夜、チヒロさんはグループのLINEに送りました。「やっぱり台湾、行きたい。まだ間に合う?」。返事は1分もしないうちに来ました。「待ってた!」。
年が明けて3月の3連休、4人は台湾の夜市を歩きました。旅行から帰って最初の金曜日、3月27日の昼休みのことです。会社の机でおにぎりを開けたとき、銀行のアプリからいつもの通知が来ました。
残高は、10月とほとんど同じ2万円台でした。でもチヒロさんは、この額で4日後の給料日まで足りることを知っています。旅行用の口座には、4月からまた1万円ずつ入れる予定です。チヒロさんは、リナさんにLINEを送りました。
27日が、こわくなくなった
既読よかった! 台湾の写真、まだ毎日見てる笑
次は秋かな?
その夜、チヒロさんは自分から母に電話をかけました。台湾のお土産を送ったことと、奨学金は自分で返せていることを話しました。母は「そう、よかった」と言いました。10月に早口で切った電話は、30分続きました。
誘いを断る前に、返したあとに残るお金を見てもらう。
チヒロさんにとってあの相談は、27日から先の天気予報でした。
今日の最初の一歩
今夜、寝る前に、スマホのメモに1か月の引き落としを日付の順に並べる
5分で終わります。家賃、奨学金、カードのように、出ていく日と金額を並べてみてください。1か月でいちばん残高が少なくなる日がどこか、わかります。相談するときの、聞きたいことのもとにもなります。
2026.10.10 公開 文・WE POP編集部
参考にした情報
- 日本学生支援機構「令和6年度 奨学金の返還者に関する属性調査結果」(2025年2月調査。延滞していない人1,898人が回答、令和6年度末の参考母数 約457万人)
- 日本学生支援機構「令和6年度奨学金の返還者に関する属性調査結果【概要】」図4-2 減額返還制度の認知状況(無延滞者「知らない」51.1%)
- 日本学生支援機構「減額返還制度の概要」(2分の1・3分の1・4分の1・3分の2に減額、総額は減らない、通算15年まで)
- 日本学生支援機構「減額返還制度の収入・所得金額の目安」(給与所得者は年間収入400万円以下など)
- 日本学生支援機構「返還を待ってもらう(返還期限猶予)」
- 日本学生支援機構「口座振替(リレー口座)」(振替日は毎月27日。休業日なら翌営業日)
- 日本学生支援機構「お問い合わせ先一覧」(奨学金相談センター 0570-666-301、9時〜20時、土日祝日・年末年始を除く)
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