この記事にはプロモーションを含みます。登場するミユさんやヒナさんたちは、WE POPが作った架空の人物です。数字は国の調査のものです。
「誰が作ったの?」その10分後、ミユさんはトイレの個室で泣いていました。
月曜の部会で、資料の数字をまちがえた
目が赤いのをマスクで隠して、席に戻った
仕事で泣くとか、向いてないのかな
既読金曜の夜、ミユさんがこのLINEを送った相手は、大学のサークルで一緒だったヒナさんです。ヒナさんは前の年に、仕事のことを外の人に相談してから転職して、今は別の会社で働いていました。
ミユさんは当時25歳で、住宅設備の商社で営業事務をして3年目でした。学生のころのカフェのバイトでは、店長に「ミユは顔に出るから、お客さんに信用されるね」と言われていました。2年目の秋からは、教育係だったタカノさんに任されて、月曜の部会の売上の資料を作っていました。
2月の月曜日、10時からの部会でのことです。配った資料の売上が、2,400万円のはずが240万円になっていました。部長は資料をめくる手を止めて、「誰が作ったの?」と聞きました。会議室が静かになり、ミユさんは「私です。すみません」としか言えませんでした。続きは、タカノさんが手元の表を見ながら説明してくれました。
会議が終わると、ミユさんはまっすぐトイレに行きました。個室の鍵をかけたとたん、涙が止まらなくなりました。トイレットペーパーで目を押さえたまま、10分。洗面台の鏡に映った目は、まだ赤いままでした。ミユさんはバッグの底からマスクを出し、目のすぐ下まで引き上げてから、席に戻りました。
その夜、ミユさんは「仕事 泣く 弱い 向いてない」と検索しました。いちばん上に出てきたのは「仕事に向いていない人の特徴10選」という記事です。チェックをつけていくと、7つが当てはまりました。ミユさんは最後まで読まずに、画面を消しました。
次の日から、ミユさんは会社でマスクを外さなくなりました。花粉の季節だったので、誰にも何も聞かれません。ほかの資料も、夜まで残って3回見直してから出しました。それでも、次の部会のことを考えると、キーボードの上で指が止まりました。タカノさんには、トイレで泣いたことを言えないままでした。
01仕事で泣くのは、弱い?
金曜の夜のLINEに、ヒナさんからはすぐに返事が来ました。
月曜から、ひとりで抱えてたんだね。何があったの?
売上の桁。誰が作ったのって聞かれて、私ですしか言えなかった
私も前の会社で、2回泣いたよ
ヒナも?
仕事のミスでしんどくなる人、けっこういるよ。国の調査にも出てた
20代の働く人で、仕事に強い不安・悩み・ストレスを感じている人72.0%約10人に7人
そのうち、中身に「仕事の失敗、責任の発生等」をあげた人60.8%約10人に6人
出典:厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)」(2025年10月末時点)。ストレスの中身は、主なものを3つまで選べる質問で、20代ではこれがいちばん多い答えでした。
ミスでしんどいのは、私だけじゃないんだ
うん。だから弱いかどうかより、何で泣いたのかを分けてみたら?
眠れない、食べられない日が続いているなら、向き不向きを考えるより先に、体を休めることを選んでください。厚生労働省の「こころの耳」には、働く人が電話やSNS、メールで話せる相談先がまとまっています。病院を探すこともできます。
ヒナさんに言われて、ミユさんは泣いた理由を書き出してみました。部長の言い方がこわかったわけではありません。営業の人たちが、あの数字で来月の計画を立てると思ったら、こわくなったのです。もうひとつは、作った資料を誰も見ないまま、部会に出していたことでした。
あと、泣いたあとのことも思い出した
席に戻ってすぐ元の表を見たら、列が1つずれてた
原因、自分で見つけたんだ
うん。確かめる順番も、表の横に書いた
それ、メモしといて。外の人に話すときに使えるから
外の人か
でも泣いた話なんてしたら、向いてないって言われそう
02泣いた話を、外の人にしていいの?
私は去年、キャリアの相談ができる転職サービスで話したよ
相談したら、すぐ辞める話になりそうでこわい
1回目は話しただけ。どこにも応募しなかったよ
泣いた話もしたけど、向いてないとは言われなかった
お金は?
相談はタダだった。お金は、採用する会社が払うしくみなんだって
聞きたいことを3つ決めて行くと、話しやすいよ
転職の相談が無料で使えるしくみは、転職エージェントが無料のわけの記事でくわしく書いています。
03面談で聞かれた、ひとつの質問
その夜、ミユさんはスマホのメモに、聞きたいことを3つ書きました。自分は、どんな働き方なら力が出るのか。今の経験は、外でどう見られるか。働きながら、次を探せるか。いちばん下には、泣いたあとに列のずれを見つけた話も書いておきました。
書き終えてから、20・30代向けの、キャリアの相談ができる転職サービスの面談を予約しました。向いているかどうかは、話を聞いてから決めることにしました。
ヒナさんとLINEした次の週の水曜の夜、聞きたいことを3つ聞き終えると、画面の向こうの担当の人が言いました。「ひとつ、聞いてもいいですか。泣いたあと、最初に何をしましたか」。ミユさんはメモを見ながら、列のずれを自分で見つけて、確かめる順番を書き足した話をしました。担当の人は最後まで聞いてから、こう言いました。
画面を閉じたあと、ミユさんはメモのいちばん下の行を、もう一度読みました。泣いたあとに列のずれを見つけた話です。書いたときより、少しだけ誇らしく見えました。紹介された求人の中から、資料を2人で確かめてから出すチームのある会社を、ミユさんは自分で2つ選んで応募しました。
あなたの場合面談の前に、聞きたいことを3つ書いてみる
書いた内容は、この端末の中にだけ残ります。
047月、会議のあとで
6月の最後の日、ミユさんはタカノさんに、2月のことを話しました。「あの日、トイレで泣いてたんです」。タカノさんは少し笑って、「知ってたよ」と言いました。「戻ってきてすぐ、原因を見つけてきたでしょ。あれで、次も任せようと思ったんだよ」。
7月から、ミユさんは新しい会社で、営業の数字をまとめる仕事を始めました。資料は、出す前に2人で確かめます。3週目の会議で、ミユさんが見つけた数字のずれを伝えると、課長が言いました。「ミユさんが見てくれると、安心して出せるね」。目の奥が、少し熱くなりました。ミユさんは、マスクを探しませんでした。
その夜、ミユさんはヒナさんにLINEを送りました。
今日、会議でちょっと泣きそうになった。うれしいほうで
もう、マスクで隠さない
既読顔に出るの、昔からミユのいいところじゃん
送ったあと、ミユさんは思い出しました。5か月前、会社のトイレの個室で、赤い目をマスクで隠していたことを。
向いてないかは、泣いた理由を外の人に話してから決める。
ミユさんにとってあの面談は、マスクを外して働ける場所の下見でした。
今日の最初の一歩
今夜、寝る前に、スマホのメモに「最近しんどかった場面」と「そのあと自分でしたこと」を1行ずつ書いてみる
5分で終わります。「泣いた」「言い返せなかった」の1行でかまいません。そのあとにしたことは小さくても、面談で自分の話をするときの材料になります。
2026.10.12 公開 文・WE POP編集部
参考にした情報
- 厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況」(2026年8月7日公表)第17表 仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスの有無及び内容
- 厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況」
- 厚生労働省「こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」相談窓口案内(電話・SNS・メール相談、医療機関の検索)
- 石川労働局「職業紹介事業とは」(手数料のしくみ)
- キャリナビ 公式サイト(無料のしくみ・相談の流れ)
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