目次
昼休みにSNSを見ていて、ITやデザインの仕事をしている同年代の投稿に、ちょっと心が動く。でも、経験がないと無理かな。スクールに通うにも、お金がかかりそう。そんな人に向けて書きました。学ぶためのお金には、国の支援があります。読み終わるころには、自分がどの支援を使えそうか、何から始めればいいかがわかります。
この記事でわかること
- 経験がなくても、ちがう仕事に移れるのか
- お金が戻る「教育訓練給付」のしくみと、戻る額
- 無料で学べる「ハロートレーニング」は、誰が使えるか
- 給付金を使って学ぶ流れと、忘れると損をする手続き
先に結論
- 若手の中途採用で、会社がいちばん多く重視していたのは意欲。経験だけで決まるわけではない
- 国が選んだ講座なら受講料の20%〜最大80%が戻るしくみ、辞めたあとなら無料で通える訓練もある
- 給付金は、講座が始まる前の手続きを忘れると、もらえないことがある
01経験がないと、転職はむずかしい?
ひとことで経験だけで決まるわけじゃない。会社がいちばん多く重視していたのは「意欲」。
まずは数字から。国(厚生労働省)の調べでは、20代は、30代以上より転職する人の割合が高くなっています。
出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査」転職入職率。1年間に転職して入った人の数を、働く人の数で割ったもの
全年齢の9.9%と比べると、20代はどこも14%をこえています。20代で仕事を変えるのは、よくあることなんです。
では、会社は中途採用でどこを見ているのか。15〜34歳の正社員を中途で採った会社に、国が聞いています。
72.7%
意欲・チャレンジ精神を重視
66.9%
コミュニケーション能力を重視
42.3%
仕事や訓練の経験を重視
いちばん多いのは意欲で、経験を重視した会社は4割ほど(5番目)。この「経験」には、訓練を受けた経験も含まれます。中途採用では、新卒(14.7%)より経験が重視されるのも事実です。それでも、経験がないからとあきらめなくていい、と私たちは考えています。
メモ
専門の仕事なら、学んだ証拠を見せたい
ただ、仕事によってちがいもあります。国の別の調べで、「専門的・技術的な仕事」を見てみます。ITやデザインのほか、医師や保育士なども入る広い分け方です。転職者を採った理由(3つまで選ぶ質問)の1位は「経験を活かし即戦力になるから」で、64.1%でした(2025年)。これは経験者を採った理由です。未経験から目指すなら、講座や訓練で学んで、作ったものを見せられるようにしておくのが、WE POPのおすすめです。
02働きながら学ぶ? 辞めてから学ぶ?
ひとことで迷ったら、働きながら学ぶほうから考える。
学び方は、大きく2つ。今の仕事を続けながら講座で学ぶか、辞めてから国の訓練に通うかです。使える支援も、それぞれちがいます。
働きながら学ぶおすすめ
いいところ
- 給料をもらいながら学べる
- 国が選んだ講座なら、払ったお金の20%〜最大80%が戻る
- 夜や土日、通信で学べるものもある
気をつけること
- お金は、いったん自分で払う
- 仕事のあとに、勉強の時間をつくるのが大変
- 雇用保険に1年以上入っているなどの条件がある
辞めてから訓練を受ける
いいところ
- 受講料はかからない(テキスト代などは別)
- 失業保険や給付金をもらいながら、通えることがある
- 学ぶことに、時間を全部使える
- 教育訓練給付も、辞めたあと1年以内なら使える
気をつけること
- 収入が減るので、そのあいだのお金を用意しておく
- 面接や筆記試験などの選考がある
- 選べるコースや募集の時期は、地域によってちがう
どちらが合うかは、人によってちがいます。辞めるかどうかで迷っているなら、第二新卒、いつ動く?も読んでみてください。
WE POPのおすすめは、まず働きながら学ぶほうです。その仕事が自分に合うかを、収入を止めずに試せるからです。もう辞めている人や、辞めると決めている人は、05のハロートレーニングから見てください。
ポイント
学んでから辞めると、失業保険の「1か月待ち」がなくなることも
自分の都合で辞めると、失業保険(雇用保険の基本手当)には、原則1か月の待ち期間があります。これを「給付制限」といいます。2025年4月から、ここが変わりました。辞める前の1年以内に、教育訓練給付の講座などを最後まで受けていれば、この1か月を待たずにすみます。2025年4月1日以降に受講を始めた講座が対象です。辞めたあとハローワークに申し出て、修了の証明などを出します。7日間の待期は残ります。くわしくは、ハローワークで聞いてみてください。
03受講料が戻る「教育訓練給付」って?
ひとことで国が指定した講座なら、払ったお金の20〜80%が戻ってくる。
ことば教育訓練給付
国が指定した講座を最後まで受けると、払ったお金の一部が戻ってくるしくみ。お金は雇用保険から出ます。手続きは、住んでいる地域のハローワークで。
講座は、レベルなどで3つに分かれていて、戻ってくる割合がちがいます。
出典:ハローワークインターネットサービス「教育訓練給付金」(2026年10月時点)
- 一般…20%(10万円まで)。終わったあとに申請する
- 特定一般…40%(20万円まで)。資格を取って就職などをすると、50%(25万円まで)
- 専門実践…50%(1年で40万円まで)。資格を取って就職などをすると70%(56万円まで)。さらに給料が5%以上上がると、80%(64万円まで)
専門実践は、3年で最大192万円まで(4年制の講座などは、4年目の分が出ることもあります)。看護師などの資格をめざす学校や、ITなどデジタルの技術を学べるものもあります。講座の数は3,485(2026年10月1日時点)。土日に開くものが328、通信で学べるものが934あります。
ポイント
2024年10月から、戻る額が増えました
特定一般は、資格を取って就職などをすると10%増えて50%に。専門実践は、給料が5%以上上がると、70%からもう10%増えて80%になりました。2024年10月1日以降に始めた人が対象です。
戻ってくるのは、入学料と受講料のぶんだけ。試験を受けるお金や、なくてもいい教材、交通費、パソコン代は入りません。割引があったときは、割引のあとの額がもとになります。
気をつけて
「給付金で実質タダ」とせかされたら、いったん止まる
国が指定するのは、学校ではなく「講座」です。「国の指定校」をうたう勧誘には気をつけてください。給付金は、申し込んだ時点で先にもらえるものではありません。キャッシュバックやパソコンのプレゼントを受けたのに、その分を引かずに申請すると、不正受給になることもあります。あやしいと感じたら、その場で契約せず、消費者ホットライン「188」に相談してください。
04自分は使える? 雇用保険の長さを見てみよう
ひとことではじめてなら、雇用保険に入って1年(専門実践は2年)でOK。
使えるかどうかは、雇用保険に何年入っていたかで決まります。
ことば雇用保険
仕事をなくしたときなどにお金が出る、国の保険。週20時間以上で、31日以上働く見込みがあれば、パートやアルバイトでも入ります。給与明細で、この保険のお金が引かれていれば入っています。
1年以上
はじめての人(一般・特定一般)
2年以上
はじめての人(専門実践)
3年以上
2回目からの人(3つとも)
つまり、新卒で入社して1年たてば、一般と特定一般が使える計算です。2年たてば、専門実践もOKです。
- 辞めた人…辞めた次の日から1年以内に、講座を始めること。妊娠や病気などで、延ばせることもある
- 転職したことがある人…前の会社のぶんも、あいだが1年以内なら足せる
- 前に給付金をもらった人…前回から3年以上たっていること
わからないときは、ハローワークに「支給要件照会」を出すと、使えるかどうか教えてもらえます。窓口のほか、郵送やネットからでもOK。電話ではできません。
05無料で学べる「ハロートレーニング」って?
ひとことで仕事を探している人向けの、国の職業訓練。受講料はかからない。
ハロートレーニングは、国の制度として行う職業訓練の愛称です。仕事を探している人が、働くのに必要な技術を無料で学べます。大きく2つあります。
- 公共職業訓練…おもに、失業保険をもらっている人向け。長さは、だいたい3か月〜2年
- 求職者支援訓練…おもに、失業保険をもらえない人向け。たとえば、フリーランスだった人や、もうもらい終わった人など。長さは2〜6か月
どちらも受講料はかからず、テキスト代などは自分で払います。まずはハローワークで仕事探しの申し込みをして、相談します。そのあと、面接や筆記試験などの選考があります。
失業保険をもらっている人が、ハローワークの指示で公共職業訓練に通うと、訓練が終わるまでもらい続けられます。もらえる日数が、途中で終わってもです。1日500円の手当(2万円まで)や、交通費も出ます。ただ、指示が出るのは、もらえる日数がある程度残っているうちが基本。辞めたら、早めに相談しておきましょう。
10万円
もらえるのは、本人の収入が月8万円までの人など。世帯(いっしょに暮らす家族)では、収入が月30万円まで、貯金などが300万円までという条件もあります。訓練の日は、全部出るのが原則です。10万円がもらえなくても、訓練は無料で受けられます。
ITやデザインのコースもあります。2024年度の求職者支援訓練では、ITのコースを3,775人、デザインのコースを9,357人が受けました。どちらも、3人に1人以上が20代です。
37.9%
ITのコースを受けた人のうち、20代
34.6%
デザインのコースを受けた人のうち、20代
終えて3か月後の就職率は、ITが62.6%、デザインが57.8%でした。ここでの就職は、雇用保険に入る形で働き始めたこと。ITやデザインの仕事に就いたかどうかまでは、この数字からはわかりません。
06給付金を使って学ぶまで、どう進む?
ひとことで講座を決めたら、始まる2週間前までにハローワークへ。
ここでは、受講料が戻る給付金の流れを見ていきます。特定一般と専門実践は、始まる前にも手続きがあります。一般は、前もっての手続きはいりません。順番どおりに進めれば、むずかしくありません。
国の検索システムで、講座を探す
「教育訓練給付金 検索システム」で、分野や資格の名前から探せます。お金が戻るのは、国が指定した講座だけ。同じスクールでも、ものによってちがいます。
使えるかどうか、ハローワークで確かめる
条件に合うか不安なら、「支給要件照会」をしておくと安心です。講座が指定されているかも、いっしょに教えてもらえます。
キャリアコンサルティングを受けて、ジョブ・カードを作る
特定一般と専門実践だけの手続きです。「ジョブ・カード」というシートに、これまでの仕事やこれからの目標を自分で書いて持って行きます。そのうえで、仕事の相談のプロと60〜90分ほど話します。正式な名前は「訓練前キャリアコンサルティング」。予約がいりますが、お金はかかりません。まずはハローワークの訓練の窓口へ。
始まる2週間前までに、ハローワークで手続き
これも、この2つだけ。ジョブ・カードなどの書類を出します。原則として、始まる日の2週間前まで。講座の申し込みがまだでも、手続きはできます。
最後まで受ける
一般と特定一般は、修了(最後まで受けること)が条件です。専門実践は、受けているあいだも6か月ごとに申請します。
終わったら1か月以内に、ハローワークで申請する
一般と特定一般は、修了した次の日から1か月以内。資格を取って就職したら、プラス分の申請もします。
ネットの古い記事には「1か月前まで」とあることも。2024年4月から、原則2週間前までに変わっています。
気をつけて
始まる前の手続きを忘れると、もらえないことがあります
特定一般と専門実践は、始まる2週間前までに手続きをしないと、お金が戻らないことがあります。キャリアコンサルティングは予約がいるので、1か月以上前から動いておくと安心です。申し込む前に、その講座が対象かどうかを、厚生労働省の検索システムで確かめてください。講座のページの「指定期間」に、始まる日が入っているかも見ておきましょう。
07動き出す前に、準備できているかチェック
ひとことで講座を選ぶ前に、移りたい仕事の求人を読んでおく。
何を学ぶか決める前に、今の準備の具合を見てみましょう。
当てはまるものをタップしてみてください
当てはまったのは 0 / 6個
求人を先に読んでおくと、何を学べばいいかがはっきりします。求人によく出てくるソフトや資格がわかれば、それを学べるところを探せばいいからです。
ポイント
学んだことは、応募書類で見せる
学んで作った作品や取った資格は、応募の書類に書けます。書き方ははじめての職務経歴書で。未経験OKの求人は、転職エージェントに聞いてみるのも手です。何社使えばいいかは、こちら。
08よくある質問
Qパートやアルバイトでも使えますか?
A雇用保険に入っていれば、使えます。週20時間以上で、31日以上働く見込みがあれば、パートやアルバイトでも入るしくみです。入っていない人は、求職者支援訓練を見てみてください。働きながらでも受けられることがあります(毎月の10万円は、収入が月8万円までの人など)。
Q講座を始めてから、給付金のことを知りました
A一般なら、前もっての手続きはいりません。始めた日に条件に合っていれば、終わった次の日から1か月以内に申請できます。ほかの2つは、始まる前の手続きがいります。気づいたら、まずハローワークに相談してみてください。
Q訓練を受ければ、就職できますか?
A残念ながら、約束はされません。求職者支援訓練のITのコースでも、3か月後の就職率は62.6%でした。訓練中から求人を読んで、応募の準備をしておくのがおすすめです。この訓練では、始まる前から終わったあとまで、ハローワークが仕事探しを手伝ってくれます。
今日の最初の一歩
今夜、検索システムで気になる講座を1つ探してみる
スマホで「教育訓練給付金 検索システム」と調べて開き、学びたい分野や資格の名前を入れるだけ。見つけたら、講座の名前と、3つのうちどの種類かをメモしておきましょう。5分で終わります。
2026.10.03 公開 文・WE POP編集部
参考にした情報
- 厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況」(令和8年8月31日公表)
- 厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況」3 転職入職者の状況(図4-1 性、年齢階級別転職入職率)
- 厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」(表4 若年正社員の採用選考にあたり重視した点)
- 厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」(令和8年9月25日公表)
- 厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」事業所調査 2 転職者の採用状況(表4 転職者を採用した理由)
- ハローワークインターネットサービス「教育訓練給付金」
- 厚生労働省「教育訓練給付金」
- 厚生労働省「Q&A~専門実践教育訓練給付金~」
- 厚生労働省「2024年4月1日から教育訓練給付の支給申請がしやすくなります!」
- 厚生労働省「専門実践教育訓練の指定講座を公表しました(令和8年10月1日付け)」
- 厚生労働省「教育訓練給付制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座 検索システム」
- 厚生労働省「教育訓練給付制度に関する不適正な勧誘にご注意ください」
- キャリア形成・リスキリング推進事業(厚生労働省委託事業)「訓練前キャリアコンサルティング」
- キャリア形成・リスキリング推進事業(厚生労働省委託事業)「個人向け無料キャリアコンサルティング」
- 厚生労働省「マイジョブ・カード」
- 厚生労働省「雇用保険制度Q&A~事業主の皆様へ」(Q1 雇用保険の加入の要件)
- 厚生労働省「ハロートレーニング(離職者訓練・求職者支援訓練)」
- 厚生労働省「ハロートレーニング(公共職業訓練・求職者支援訓練)の全体像」
- 厚生労働省「ハロートレーニング受講の流れ」
- 厚生労働省「求職者支援制度のご案内」
- 厚生労働省「令和6年度求職者支援訓練実績」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」(公共職業訓練等を受講する場合・技能習得手当)
- 厚生労働省 リーフレット「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」
- 消費者庁「消費者ホットライン」
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